このところオフの多忙が続いたこともあって、ブログ記事更新が滞りがちでしたが、ここいらで気を取り直して再開したいと思います。
本シリーズでも何回かお目にかかりましたが、京都市内には市民がごく普通に生活している空間の中にも、思わぬ妖怪スポットやパワースポット、不思議な伝説の残る旧跡などがいくつも存在しているというケースが少なくありません。
そして、多くの人たちが行き交う繁華街の中にも、そのようなスポットが何気なく点在しているというケースもあるのです。
今回はそんなスポットのひとつ。
京都寺町商店街の中にある矢田寺と、送り鐘をとりあげます。
この寺は、本シリーズで何度かとりあげた、この世とあの世とを自由に行き来したと伝えられる超人・小野篁(おのの・たかむら)とも関係の深い寺のひとつです。
矢田寺は、金剛山矢田寺と称する西山浄土宗の寺院です。
元々は平安時代の初め頃に大和国の矢田寺の別院として、現在の下京区の辺りに創建され、以後各地を転々として1579年に現在の地へと移されたそうです。
矢田寺では、有名なものがふたつあります。
ひとつは、「矢田地蔵」あるいは「代受苦地蔵」と呼ばれる本尊。高さ約2メートルの、炎をまとった地蔵菩薩の立像です。
もうひとつは、「送り鐘」と言われるこの寺の梵鐘です。
まずは、矢田寺への行き方から簡単に説明しましょう。
京都の繁華街のひとつである寺町通りの商店街。
ここは北側・御池通りに面した入り口です。
御池通りを挟んで反対側には、京都市役所があります。
最寄の交通機関は、京都市営地下鉄の京都市役所前駅です。
地上出入り口のすぐそばです。
なお、ここから寺町通りを丸太町通りの手前あたりまで北上していけば、第59回でとりあげました下御霊神社があります。
そこから寺町商店街に入って南に進んでいきます。
その途中には、あの織田信長が最期を迎えたという本能寺の門があります。
ここも歴史的に有名な場所で、ゆっくりと寄っていきたい気もしますが、今回の主目的ではないので、とりあえず通り過ぎます。
また別の機会にでもゆっくりと訪れたいと思います。
さらに少し南へ進み、三条通りと交わる少し手前辺りの交番の隣にあります。
中に入ってみます。
参拝者の中には、若い人たちの姿も見られました。
わりと有名というか、メジャーなの場所なのでしょうか。
入ってすぐのところには、絵馬や小さなお地蔵さんたちが並んでいる一角も。
この中の絵馬の絵を見てみます。
絵馬には、矢田寺にまつわる伝説の場面が描かれています。
あの世に居た篁がある時、同じくあの世とこの世とを行き来できる能力を持つ満米上人と地獄へ出かけた時のことです。
その時に地獄の炎の中を歩き回る一人の僧の姿を見かけました。
「あなたは坊さんなのに、どんな悪事をして、こんな地獄に落とされたのですか?」
と尋ねてみると、その僧は涼やかな声で
「この火の中で苦しんでいる亡者を救うために、彼らに代わって責め苦を受けているのです」
と答えました。
驚いてその僧の姿を見直すと、その僧こそは死者に救いをもたらす地蔵菩薩だということがわかりました。
我が身を犠牲にしてまでも亡者に救いをもたらそうとする地蔵菩薩の姿に感動した篁と満米上人は、炎に包まれる地蔵菩薩の像を創りました。
その地蔵菩薩像こそが、矢田寺の本尊として祀られている矢田地蔵だと伝えられています。
境内を見て回ります。
写真がぶれてしまってすみませんが、「しあわせ大日如来」です。
水子地蔵の像です。
珍しく帽子を被っています。
やはり、昔から死亡率をあげていたのが、高齢者や乳幼児だったからでしょう。
また、今と違って昔は、乳幼児の死亡率も高かったでしょうから。
本尊前にある「びんずる行者」の像。
同じく小野篁ゆかりの地である千本えんま堂にもありました。
確か、「首から上の具合が悪いところをさするとご利益がある」ということでした。
どうしても「飲酒戒」を守ことができなかった、つまり飲酒がやめられないためにお堂の中に入れてもらえず、お堂の外で教えのために働いていたという、ある種の親しみを感じさせる人物ですが、その像がここにもあったとは。
そして、本尊前。つまり炎に包まれた地蔵菩薩像が奥にあります。
なお、本尊前にある鐘は、送り鐘と言われるものです。
同じく小野篁ゆかりの寺である六道珍皇寺(注:シリーズの第29回、第30回、第52回でとりあげました)にあった「迎え鐘」とは対をなすものであるそうです。
六道珍皇寺の「迎え鐘」が、お盆に精霊(冥土から帰ってくる祖先の霊魂)を迎えるためにつく鐘です。
それに対してここの「送り鐘」は、精霊(しょうろう。死者の霊)を迷わずにあの世に送り返すためにつく鐘です。
この鐘をついて死者をあの世に送り返すことを「精霊送り」と言うそうです。
今年のお盆は六道珍皇寺の六道まいりで「迎え鐘」をついてご先祖の霊を迎えましたので、今度はこの鐘をついてあの世に戻ってもらいます。
こうして、今年のお盆を終えました。
それでは、今回はここまで。
また、次回に。
*京都妖怪探訪まとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm
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