本に学ぶ 「編集者の学校 」
① 私はいくつかの大学で編集論を教えているが編集に興味をもつ学生が増えているようである。編集者を目指学生には講義の最初この3つは守るように話す。・毎日新聞を読む・旺盛な好奇心で何でもみたり聞いたりしてみたいと思って行動する・古今東西の名作は勿論最近話題の本、週刊誌、月刊誌など手当たり次第読む。編集とはいろいろな材料を集めて新聞・雑誌・書物を作ることである。現在の編集者は情報の洪水で読者にどんな情報を届けるべきか考えるゆとりをなくしもがいているように見える。
② 1970年4月私が講談社に入社したころ新米編集者に企画を考えるゆとりなどないから外に出て一日に何人もの人にあって何か面白いことないか御用聞きに回るのが日課だった。あらゆるジャンルの人に会って話を聞き、飯を食べた。大きなホテルにかかっている催事をみて励ます会や出版記念会に飛び込ませてもらい名刺をばらまいて人脈を広げたものだ。夜、編集部にもどり原稿をかいた。これはと思う事件や要人の来日があると直行した。携帯電話がないので連絡のしようもなくて戻ると編集長から怒鳴られることもしばしば。どこまでが仕事でどこまでが遊びかの線引きも難しかったが忙しいとは感じなかった。
③ 編集も一つの伝承芸である。先輩がやってきたことを参考にしながら自分なりのノウハウを積み重ねていくことだ。編集力を磨くために私は若い編集者に言う。横並びはやめて人のやらないことをやれ。デジタルにふるまわされるな。PCを捨て町にでよう。うまい文章より相手に伝わる文章をかけ。遊べて飲めて歌おう。時代を見る目を養う。編集者の仕事の8割は企画を考えること。そのため万巻の書物を読み人と付き合い、映画、音楽、演劇を観賞する。全ては企画を生み出す為である。
④ 24時間企画を考え、考え抜く。この仕事は選ぶのでなく仕事の方が人を選ぶのだ。出版社に入ったから編集者になるのではない。自分が感動したものをひとりでも多くの人に伝えたい。そのためにあらゆる手段を使って伝えてやろうという強い思いがあればできる職業なのだ。編集者ほど楽しい職業はない。生まれ変わってもこの仕事をしたい。なぜなら本を読んでも、映画を見ても、音楽をきいてもレストランにいっても全てが仕事になる。遊びも全て仕事。おまけに自分が会いたい作家、芸能人、スポーツ選手にあって1対1で話が聞けるかも知れず手応えもある。
⑤ 作家というのは非常に孤独です。無人島で生活しているロビンソン・クルーソーのようなもので自分の思いのたけを手紙にかいて瓶の中に入れ海に流している。その瓶を最初に拾い中の手紙を読んでくれるのが編集者です。彼は返事をくれる。編集者とは現実社会と物を書く世界をつなぐ命綱へその緒のようなもの。物書きと現実社会をつないでくれるのが編集者。物書きに取って編集者は命綱である編集者は感覚をみがき作家と心中するくらいの気持ちが欲しい。自分という人間を常に磨いていることも大切。編集者になるということはサラリーマンになることとは全く違う。編集者は職人。癖のある人間を相手に一冊の本を仕上げる。時間と労力を惜しまない職人である。いいものを書き手と共につくろうという根性がなければいい仕事はできないでしょう。 モトキマサヒコ氏