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これ・・
小鉢殿の中に小皿殿がすっぽりはまってしもうて取れませんと
合戦のあと湯船で垢ば落とそうとした折
ちょっと見ぬ間に小鉢殿に小皿殿がはまってしもうた
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ピック宣教師やら内府殿のお助けの手を借りても
ピッタリひっついてしもうてなかなかとれんずく
はや一週間。
中に閉じ込められた「榎殿」の御身がもうそろそろ
腐りはじめる頃・・・・
そろそろ殿のご決断が奮われる頃・・
この上は小鉢殿の御身だけでもお救いせねば
湯ばかけたり、たたきつけたり
あらゆる手を講じてきたがもはや打つ手はござらん。
申し上げにくいが小皿殿、小鉢殿の為に
腹ば召されてはくれまいか?
なんと申された?
手前共、丼殿と共にお家の為に一番ご奉公いたしてきたはず
あまり食卓に出番の無い小鉢殿より
わしの身を軽んじられるか?
食器棚の一番取り出しやすい場所に
屋敷を構えさせていただいていることが何よりの証拠じゃ
小鉢殿の屋敷は棚のずっと奥だと
お主、知らぬとはいわっしゃるまいな?
それは重々承知
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しかしながら小皿殿はまだ他にも「替え」がござる故
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いえ、決して小皿殿のお働き軽んじておる訳では
ござらぬ。
どのような合戦でも必ず出陣されているお働きは
重々承知つかまっておりまする。
あい解り申した。そこまで言われるのなら
わしも武士の端くれ・・
お家のため腹かっさばいて最後のご奉公をば
かたじけない、御身のお働きと決断
殿も重々わかっておられる故・・・
後に残ったお子達
猪口殿、塗小鉢殿たちの身の振りは
決して悪いようにはしますまいぞ・・
では、殿さらばでござる・・・
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小皿家は二千石ば与えられ、丁重に
「不燃物」として葬られた・・・