見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

不公平を再生産するしくみ

2006-07-18 22:09:38 | 政治・社会
中央省庁の交わしていた随意契約の問題は記憶に新しいですが、
地方自治体も、似たような傾向にあることは確かです。

--------------------
今年4月に政府が衆院行政改革特別委員会に提出した資料から、平成16年度、20の中央省庁が交わした契約の約70%(5500余件)が、天下り先の公益法人や民間企業と結ぶ随意契約だったと判明しました。随契率は、環境省92%、国土交通省90%、内閣府・経済産業省82%。
--------------------

三位一体改革と同時に行政改革と規制緩和が促進され、
行政が当たり前のように担って(独占して)いた公共サービスが
民間に開放されています。

けれど、
一般の民間事業者の可能性を信じ期待する行政職員は、まだ少数です。
「天下り先」が一般の民間より優先されるのは、
将来の就職先の保全意識ばかりではなく、
「顔の見える安心感」と「裏の相談役」という理由もあります。

今日、職員がもってきた案件は、
行革の流れによる福祉系外郭団体の解体計画案でした。
既存雇用職員の処遇が頭の痛い課題ですが、同時に
今、担っているサービスをどうするかも大きな焦点です。

解体の任を背負って4月から外郭団体に派遣した職員は、
考察力に優れ、短期間で団体の状況を把握し、
解散スケジュールをまとめ上げることのできる有能な男性です。

これまでの事業の収支バランスを分析し、収益事業と非営利事業を分類。
解散後の各種事業をどうするかの素案も詳細に計画されていました。

が、問題は、
その外郭団体が担っていた委託・補助事業のほとんどを、
残る別の外郭団体にそのままの委託費や補助金を手当てし、
特命随意契約で移管するというものでした。

担当者職員の説明を最後までじっくり聞いたあと、思わずため息。

同席した上司が、特命随契の理由を説明しました。

気持はわからないでもありません。
・解散することを雇用職員に告げる時期は少し先になるため、
 解散後に、既存事業を受けてくれる団体を内々に打診しておきたい。
 その内部秘密を相談できるのは、気心の知れた先輩退職職員がいる
 外郭しかない。
・随意契約事業では、既存の雇用職員をできるだけ採用してほしいし、
 そんな我儘をお願いできるのも先輩職員のいる外郭しかない。

なるほど。
行政とは、リスクが最小限になる道を選ぶもの。
リスクを減らすことが、行政の使命であり、
市民にとっての最大の利益提供となる、と。

しかし、そこに横たわる大きな問題は、
「自分が知るところの外郭団体しか、委託候補がない」
「公募によるリスクを回避する選定方法がない」
という確信を、何を根拠としているのかについて、
担当者が疑問をもたないということでした。

悪気の一切ない職員の、疑いのない行為により、
彼らの目の届く範囲の「民間」に開放(?)される行革が進み、
市民サービス提供の競い合いによる緊張感を知らず、
組織幹部となる機会のないプロパー職員の外郭団体が温存されるという
不公平なしくみが再生産されていくということなのでしょうか。

今日は、とりあえず「外郭を育てる勇気を」と言葉を添え、
起案書類を持ち帰っていただきました。
果たして、新たな案をもって再来してくれるでしょうか。


にほんブログ村 サラリーマン日記ブログへ


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 進化するケータイの使い方 | トップ | 次の記事へ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

政治・社会」カテゴリの最新記事