マラケシュから首都ラバットへ向かう途中カサブランカに立ち寄るというツアーの日程を聞いて思い浮かんだのは、映画「カサブランカ」だった。
20世紀初頭から第二次世界大戦終了直後にかけてフランス占領下となったカサブランカを舞台に、独ナチスとの攻防を背景にした米国映画が数本作られている。
「しかし、あの『カサブランカ』は99%ハリウッドで撮影されたものです」とガイドのジョナさん。確かに、主人公を始め、登場人物は欧州人ばかりの映画らしい。
<市内>
<アルファベットの看板>
地中海と大西洋に面するモロッコは、古くはローマ帝国、そしてアラブ諸国さらにスペイン、ポルトガル、フランス等、欧州列強の様々な国の侵略と支配を経て、今日の立憲君主国として存在する。
現在のカサブランカは、メディナを囲む古い城壁を出ると、高層ビルに車の渋滞、ビジネスマン、閑静な住宅街。街の中心部からはアラビア文字が消え、フランス語や英語のアルファベットで書かれた看板や広告ばかりが目立つ。
近年までフランスの支配を受けていたという事実は、欧州の街と変わらない風景が証明している。モロッコの公用語はアラビア語だが、地元の人と話そうとすると「英語はわからない」と言われ「フランス語かスペイン語は話せないの?」と逆に訊かれることも少なくない。
近代的な街の姿と相まって、世界最大と言われるハッサン二世モスクすら、都会のランドマークタワーのような印象だ。
入場料を払い、モスクの中に入ってみた。言語別専門ガイドの指示に従ってのみ見学が可能となっている。1986年に建築着手し1993年に完成したというからまだ新しい。
「モスクの建築資材は、2つを除いて全てモロッコのアトラス山地から持ってきたもの用いました。さて、その2つとは何でしょう」ガイドの女性は、「国内の資材」というところを強調し誇らしげに説明する。
「シャンデリアでは?」と金髪の女性が言った。「その通りです。城内に100以上あるシャンデリアは全てイタリアのベネチアガラスを取り寄せました。」
「おお!」
彼女が説明するたびに、見学者から驚嘆の声が上がる。
「そして、掃除をするためにシャンデリアは床まで自動で下りるように設計されています」と更に彼女が誇らしげに付けたす。
「おおぉ!」
どの説明を受けても、「おおぉ!」の連続だ。
ガイドも見学者の興味を惹くように質問を交えながら説明する。「この礼拝場に敷き詰められている絨毯の一部が二重に織り込まれています。さて、何のために袋状に織り込まれているのでしょうか」
「うーん、バイブルを入れるのかな」「否、イスラム教徒はバイブルなど持たないよ」「頭だろうか」・・・などと積極的に言葉を発するのは欧米系の人たちだ。
ガイドは様々な答えを否定した後、「答えは靴、です」と正解が出なかったことが嬉しそうに言った。
「ここには信者2万人を収容できますので、一般のモスクのように外で靴を脱いでしまったら最後、4万個の靴の中から自分の靴を見つけることは至難ですから」
「おおぉ!4万個!」
モスク前の敷石の広場を含めると8万人の信者が入れるという、なるほどの巨大モスクだ。気になるのは、建造費だが、ガイドの女性は「誰にもわからないのです」と笑った。維持費も気になるところだが、イスラム教はモロッコの国教。国民がこのモスクを支えている。この入場料はもちろん、観光客が落とす税金も、このモスクに貢献しているに違いない。
モスクの地下にあるアブルーション(手と体を清める泉)と浴場を見学し終わった後、ガイドの女性は質問の時間を短時間とり、そして最後に
「国内外を含めて多くの見学者がいらっしゃいますが、その方々から出る質問で多い上位3つは何だと思いますか。」と聞いた。
見学者が顔を見合わせると、彼女はおもむろに言った。
「第1位は『いくら建設費がかかったのか』、第2位は『年間の参拝者は何人か』そして、第3位は、これはモロッコ国内の女性たちの質問としてとても多いのですが『誰がこのモスクを掃除するのか』です」
見学者から大きな笑い声が上がった。もっともな質問、さすがモロッコ女性。
見学時間60分。入場料120dh(1,800円)にも納得できるガイドツアーだった。
↑遠目に小さく見えた扉も近づくと巨大。手を伸ばして背伸びをしても、木の葉にしがみつく蟻のようなだ。
↑青空に映える美しいミナレットは地上200M。真下に入り、世界一の高さを誇る塔を見上げると首が痛くなった。
↑「見学者の方々から出る質問の上位3つは、①建造費②参拝者数そして…」と見学者を楽しませるガイド
↑礼拝前に手と体を洗うマナーは、神道に似ている。清めの泉「アブルーション」のある地下室。
↑モスク回廊地下には、幻想的な照明に浮かび上がる男女別の浴場がある。
↑カサブランカの海岸に見える海は大西洋。
↑固い海岸の砂の上で、大人たちが裸足でサッカーに興じていた。サッカーゴールは砂の塔を両脇に立てたボール一個分の入り口。
20世紀初頭から第二次世界大戦終了直後にかけてフランス占領下となったカサブランカを舞台に、独ナチスとの攻防を背景にした米国映画が数本作られている。
「しかし、あの『カサブランカ』は99%ハリウッドで撮影されたものです」とガイドのジョナさん。確かに、主人公を始め、登場人物は欧州人ばかりの映画らしい。
<市内>
<アルファベットの看板>
地中海と大西洋に面するモロッコは、古くはローマ帝国、そしてアラブ諸国さらにスペイン、ポルトガル、フランス等、欧州列強の様々な国の侵略と支配を経て、今日の立憲君主国として存在する。
現在のカサブランカは、メディナを囲む古い城壁を出ると、高層ビルに車の渋滞、ビジネスマン、閑静な住宅街。街の中心部からはアラビア文字が消え、フランス語や英語のアルファベットで書かれた看板や広告ばかりが目立つ。
近年までフランスの支配を受けていたという事実は、欧州の街と変わらない風景が証明している。モロッコの公用語はアラビア語だが、地元の人と話そうとすると「英語はわからない」と言われ「フランス語かスペイン語は話せないの?」と逆に訊かれることも少なくない。
近代的な街の姿と相まって、世界最大と言われるハッサン二世モスクすら、都会のランドマークタワーのような印象だ。
入場料を払い、モスクの中に入ってみた。言語別専門ガイドの指示に従ってのみ見学が可能となっている。1986年に建築着手し1993年に完成したというからまだ新しい。
「モスクの建築資材は、2つを除いて全てモロッコのアトラス山地から持ってきたもの用いました。さて、その2つとは何でしょう」ガイドの女性は、「国内の資材」というところを強調し誇らしげに説明する。
「シャンデリアでは?」と金髪の女性が言った。「その通りです。城内に100以上あるシャンデリアは全てイタリアのベネチアガラスを取り寄せました。」
「おお!」
彼女が説明するたびに、見学者から驚嘆の声が上がる。
「そして、掃除をするためにシャンデリアは床まで自動で下りるように設計されています」と更に彼女が誇らしげに付けたす。
「おおぉ!」
どの説明を受けても、「おおぉ!」の連続だ。
ガイドも見学者の興味を惹くように質問を交えながら説明する。「この礼拝場に敷き詰められている絨毯の一部が二重に織り込まれています。さて、何のために袋状に織り込まれているのでしょうか」
「うーん、バイブルを入れるのかな」「否、イスラム教徒はバイブルなど持たないよ」「頭だろうか」・・・などと積極的に言葉を発するのは欧米系の人たちだ。
ガイドは様々な答えを否定した後、「答えは靴、です」と正解が出なかったことが嬉しそうに言った。
「ここには信者2万人を収容できますので、一般のモスクのように外で靴を脱いでしまったら最後、4万個の靴の中から自分の靴を見つけることは至難ですから」
「おおぉ!4万個!」
モスク前の敷石の広場を含めると8万人の信者が入れるという、なるほどの巨大モスクだ。気になるのは、建造費だが、ガイドの女性は「誰にもわからないのです」と笑った。維持費も気になるところだが、イスラム教はモロッコの国教。国民がこのモスクを支えている。この入場料はもちろん、観光客が落とす税金も、このモスクに貢献しているに違いない。
モスクの地下にあるアブルーション(手と体を清める泉)と浴場を見学し終わった後、ガイドの女性は質問の時間を短時間とり、そして最後に
「国内外を含めて多くの見学者がいらっしゃいますが、その方々から出る質問で多い上位3つは何だと思いますか。」と聞いた。
見学者が顔を見合わせると、彼女はおもむろに言った。
「第1位は『いくら建設費がかかったのか』、第2位は『年間の参拝者は何人か』そして、第3位は、これはモロッコ国内の女性たちの質問としてとても多いのですが『誰がこのモスクを掃除するのか』です」
見学者から大きな笑い声が上がった。もっともな質問、さすがモロッコ女性。
見学時間60分。入場料120dh(1,800円)にも納得できるガイドツアーだった。
↑遠目に小さく見えた扉も近づくと巨大。手を伸ばして背伸びをしても、木の葉にしがみつく蟻のようなだ。
↑青空に映える美しいミナレットは地上200M。真下に入り、世界一の高さを誇る塔を見上げると首が痛くなった。
↑「見学者の方々から出る質問の上位3つは、①建造費②参拝者数そして…」と見学者を楽しませるガイド
↑礼拝前に手と体を洗うマナーは、神道に似ている。清めの泉「アブルーション」のある地下室。
↑モスク回廊地下には、幻想的な照明に浮かび上がる男女別の浴場がある。
↑カサブランカの海岸に見える海は大西洋。
↑固い海岸の砂の上で、大人たちが裸足でサッカーに興じていた。サッカーゴールは砂の塔を両脇に立てたボール一個分の入り口。