ベトナムにビザなし+航空券なしで入国できるのか。
①一時しのぎの航空券を購入してキャンセルするか ②不要と知りつつもビザを取得するか ③香港駐在大使館員を信じて手ぶらで入国審査に臨むか、①②は30ドル③は足止めのリスクを覚悟することになる。
決定打がなく迷っているうちに、4つ目の選択肢が浮かんだ。④香港の旅行代理店でカンボジアの宿の予約を取り、その領収書とバウチャーを持参する。宿の予約日がベトナム入国15日以内であれば、出国証明のひとつとなる…だろう。確信はない、社会主義国の役人の手強さは想像がつかないが、理屈がわかる人間に当たれば、その書類を手に説得する自信はある。少なからずリスクは負うが、香港駐在員の「大丈夫」を信じるリスクより小さい。④の選択肢に望みを託し、香港人経営の旅行代理店に入った。
そして、飛行機はホーチミンの空港に降り、入国審査の列に並んだ。審査場は米国や豪州から帰国する難民家族であふれている。何人かが入国できず別の部屋に連れていかれる姿が目に入る。緊張の審査場。第三国へ行けなどといわれたら、その飛行機代は誰に請求しようか、などと考えているうちに順番が来た。
若い青年審査員だ。「こんにちは」ととりあえず笑顔で挨拶してみるが、彼の表情は固い。パスポートをひっくり返しながらビザがないと言うので「15日以内に出るので」と答えると「航空券を見せて」と彼。「ない、バスでカンボジアに向かうから」「じゃあ、バスの予約券を見せて」「ない、ホーチミンで買う予定なので」「じゃあ、入国できないよ」「どうして? 香港のカンボジア大使館で15日以内であることを口頭で告げればOKと言われた」「向こうの職員が事情を知らないだけだ」「ひどいな。あなたの国の役人にだまされたということ?」「・・・」彼は困った顔をしたが、スタンプを押す気配は全くない。
事前情報の通りだ。香港の大使館員へ抗議の電話をしようにも相手は動じない。仕方ない、奥の手の「ホテルバウチャー」を登場させよう、とした時、彼は別に控えていた係員を呼んだ。いよいよ入国拒否だろうか。ずらりと並ぶ審査待ちの人々の好奇心と同情(?)の視線を浴びながら、審査場の隅に設置されたデスクまで連行される。温厚そうな年配の係官が問題を抱えた入国希望者に対応していた。
連行した係員が何やらベトナム語で係官に報告すると、彼はさきほど審査官がしたのと同じ質問を繰り返して問題の所在を確認した。香港の大使館員の言葉を繰り返しても仕方ない。この時のためにと、準備したカンボジアの宿のバウチャーと領収書を提示した。「ほら、この日付を見てもらえばわかりますね。カンボジアへは安いバスで行く予定。貧乏なので、飛行機はそんなに乗れない。ベトナムにもそれほど長く滞在できない」と私。係官は、笑いながらバウチャーと領収書の中身を確認し、そして「OK」とひと言。
係員に連れられて再び若い青年審査員のいる審査場に戻された。連行した係員は「OKだ」と伝えたのだが、審査員は不満そうな顔で「何日いるつもり?」と聞く。「どこから飛行機に乗るの?そのときのチケットを見せて」と迫る。仰せの通りに従う。人の国に入れていただくのだから。
結果的にホテルバウチャーが役立った。それがなかったらもっと苛められていただろう。本当に入国できなかった可能性も。
…でも、と改めて考えてみる。
不法滞在の日本人が増えているのかもしれない。日本にいる不法滞在者とは全く異なる理由でベトナムに魅力を感じ、亜熱帯の空気の中に沈没したいと思っている日本の若者が多いのかもしれない。
そしてまた、日本の入国審査場では、アジア各国からの旅行者たちが同じような待遇を受けているのかもしれない、と。
①一時しのぎの航空券を購入してキャンセルするか ②不要と知りつつもビザを取得するか ③香港駐在大使館員を信じて手ぶらで入国審査に臨むか、①②は30ドル③は足止めのリスクを覚悟することになる。
決定打がなく迷っているうちに、4つ目の選択肢が浮かんだ。④香港の旅行代理店でカンボジアの宿の予約を取り、その領収書とバウチャーを持参する。宿の予約日がベトナム入国15日以内であれば、出国証明のひとつとなる…だろう。確信はない、社会主義国の役人の手強さは想像がつかないが、理屈がわかる人間に当たれば、その書類を手に説得する自信はある。少なからずリスクは負うが、香港駐在員の「大丈夫」を信じるリスクより小さい。④の選択肢に望みを託し、香港人経営の旅行代理店に入った。
そして、飛行機はホーチミンの空港に降り、入国審査の列に並んだ。審査場は米国や豪州から帰国する難民家族であふれている。何人かが入国できず別の部屋に連れていかれる姿が目に入る。緊張の審査場。第三国へ行けなどといわれたら、その飛行機代は誰に請求しようか、などと考えているうちに順番が来た。
若い青年審査員だ。「こんにちは」ととりあえず笑顔で挨拶してみるが、彼の表情は固い。パスポートをひっくり返しながらビザがないと言うので「15日以内に出るので」と答えると「航空券を見せて」と彼。「ない、バスでカンボジアに向かうから」「じゃあ、バスの予約券を見せて」「ない、ホーチミンで買う予定なので」「じゃあ、入国できないよ」「どうして? 香港のカンボジア大使館で15日以内であることを口頭で告げればOKと言われた」「向こうの職員が事情を知らないだけだ」「ひどいな。あなたの国の役人にだまされたということ?」「・・・」彼は困った顔をしたが、スタンプを押す気配は全くない。
事前情報の通りだ。香港の大使館員へ抗議の電話をしようにも相手は動じない。仕方ない、奥の手の「ホテルバウチャー」を登場させよう、とした時、彼は別に控えていた係員を呼んだ。いよいよ入国拒否だろうか。ずらりと並ぶ審査待ちの人々の好奇心と同情(?)の視線を浴びながら、審査場の隅に設置されたデスクまで連行される。温厚そうな年配の係官が問題を抱えた入国希望者に対応していた。
連行した係員が何やらベトナム語で係官に報告すると、彼はさきほど審査官がしたのと同じ質問を繰り返して問題の所在を確認した。香港の大使館員の言葉を繰り返しても仕方ない。この時のためにと、準備したカンボジアの宿のバウチャーと領収書を提示した。「ほら、この日付を見てもらえばわかりますね。カンボジアへは安いバスで行く予定。貧乏なので、飛行機はそんなに乗れない。ベトナムにもそれほど長く滞在できない」と私。係官は、笑いながらバウチャーと領収書の中身を確認し、そして「OK」とひと言。
係員に連れられて再び若い青年審査員のいる審査場に戻された。連行した係員は「OKだ」と伝えたのだが、審査員は不満そうな顔で「何日いるつもり?」と聞く。「どこから飛行機に乗るの?そのときのチケットを見せて」と迫る。仰せの通りに従う。人の国に入れていただくのだから。
結果的にホテルバウチャーが役立った。それがなかったらもっと苛められていただろう。本当に入国できなかった可能性も。
…でも、と改めて考えてみる。
不法滞在の日本人が増えているのかもしれない。日本にいる不法滞在者とは全く異なる理由でベトナムに魅力を感じ、亜熱帯の空気の中に沈没したいと思っている日本の若者が多いのかもしれない。
そしてまた、日本の入国審査場では、アジア各国からの旅行者たちが同じような待遇を受けているのかもしれない、と。
交渉が苦手な方だったら、金銭的なリスクをを選ぶのでしょうが、ワインさんの素晴らしい能力が十分活かされて良かったですね(^^)
でも、担当者が件の年配の係員のように応用の利く人ばかりではありません。←というか、なんてラッキーなの!って感じ。
くれぐれも無茶をしないでください。