見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

書き込まれたメッセージ

2007-05-30 20:54:12 | 旅の風景
ホーチミンの古本屋で、薄い文庫本を手に入れた。
40代の女性作家のエッセイ集。日常生活、旅などの場面を通した夫、男友達、女友達との心のひだについて率直に書き綴った短編の秀作だ。
ふと気づくと、最後の数ページに女性の文字メッセージが数ページに渡って残っていた。前の持ち主だろうか。
好きな男の子に向けた甘い想い。旅の日記とも受け取れる行動記録。
丸みを帯びた若い女性文字。
彼女は、好きな男の子を想いながら、ホーチミンに一人で来たのだろうか。
           
このメッセージを読まれることを承知で本を売ったのだろうか。彼女の知らない一人でも多くの誰かに、思いを共有してほしくて。
それとも、宿のダストボックスに彼女が投げ捨てた本を、誰かが古本屋に持ち込んだのだろうか。とすれば、彼女が捨てたかった思いを盗み見したことになる。

読み終わった本を古本屋に戻せば半額が返金される。そしてまた誰かがそれを手にするだろう。
彼女の残したメッセージで一杯の本、どうしたものだろうか。
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