見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

美しくも悲しいタージマハル

2007-04-18 23:14:37 | 旅の風景
海外を歩いていると、いわゆる遺跡や観光地より、一般の人々の日常生活に目が向いてしまう性質なのだが、この巨大な廟、タージ・マハルは別格だ。

巨大な赤石を積み上げた大きな外門に向かい、その奥に眩しいばかりの白亜のイスラム建築を目にしただけで立ち竦む。何度訪れても、その感動は変わらない。

青空にそそり立つ白大理石の墓標に、いつの時代も変わらぬ人間の性を見、その時代に思いが走る。
若くして亡くなった妃への愛を示すため、世界各地から最高級の大理石を取り寄せ、腕のいい職人を集め、22年の歳月と天文学的な費用をかけて1653年に完成。シャー・ジャハーン王は、さらにタージ・マハルの後ろに流れるヤムナー川を挟んで自分のために黒大理石の墓をたてようとしたという。川を挟んで白と黒の巨大な大理石の墓がそそり立つ姿を想像するだけで身が震える。
  
「墓の建設に浪費しようとした父親を幽閉した息子はとても賢かった。いつの時代も、わがままな為政者のために苦しむのは民だからね」と一緒に歩いていたインド人が言った。
清貧で権力と闘ってきた者でも、一度、富、権力を得てしまうと盲目になるんだと、彼は付け加えた。愛する人に自分のために公費を注ぐ為政者。確かにどこの国にもいる。
それでも、幽閉されたアグラ城から、毎日毎日、遠くに霞むタージ・マハル見ていた王の姿を想像すると哀しくなるほど、岸辺のタージマハルは美しい。
  
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