見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

何の術もない

2009-02-16 23:45:31 | 旅の風景
仕事が終わって夜中に帰宅する毎日。
シャッターの下りた商店の軒先に体を丸めて眠る人の横を歩いて住処に向かう。

どうして人が歩道の隅で眠らなければならないのだろう。
この風景はいつから始まったのだろう。

段ボール箱の中に蓑虫のようにはまって眠る人は、夜の冷たい風を多少避けることができるのだろう。
でも、
毎晩渡る交差点の角、小さなスポーツバッグを枕にし、横断歩道に背を向けて眠っている男性は、透き通ったビニール傘を広げて頭部を覆っているだけだ。
紺色の綿入りジャケットスーツに身を包んだ男性は、
もう一週間以上前から、夜になるとその場所で頭部を傘で覆い、眠りについている。
いや、車の騒音や歩道を行きかう人の足音で眠れるはずもない。



地下鉄駅から地上に出て、住処に戻るほんの数百メートルの間に、
路上で横になろうとしている何人もの人たちの横を通り過ぎる。

ポーランドでは、枕元におかれた空き缶に小銭を入れることができた。
ネパールでは、持っていたパンを渡すことができた。

自分の国で展開している風景を目の前にして、今の自分にできることが見つからない。





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2 コメント

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写真の力 (ソックス)
2009-02-18 00:03:51
こどものころ、よく母に連れられて銀杏拾いに行きました。そのころにも、社会の片隅に「浮浪児」とか「乞食」と呼ばれた人たちがいましたが、当時の社会にはどこか温かさがあったように思えます。いま目にするホームレスたちに、私もできることを見出せませんが、写真にある「就寝厳禁」の向こうのシャッターが、より冷たくいまの政情を語っているかのようです。

wineさんの社会的な切り口の写真は、ジャン―ナリストが寄せるレポートのような力とセンス感じます。同様にユーモアや風刺の効いた写真にも、ふだん自分が見落としている感覚を気付かされうれしくなります。
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シャッター (wine)
2009-02-18 22:50:42
ソックスさん、お褒め頂きありがとうございます。カメラのファインダーを向けることに躊躇する場面もよくあるのですが、写真が言葉以上に語ってくれることが多いために、よく葛藤しています。
今は、銀杏拾いをする公園や並木も少なくなってきたのでしょうね。
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