カンボジア国境近くの食堂で声を交わした日本人の母娘と、バンコク安宿街のカフェで再び出会った。
<安宿街カオサン通り>
北海道でたこ焼き屋と漁業のパートをしているという50代後半の女性は、化粧気のない小顔にショットカットが良く似合い、バンコクで買ったというバディックのカットソーとパンツを粋に着こなしていた。
初めての海外旅行だという。が、初めてにしては場慣れした度胸満杯。バリバリのジャパニーズ・ブロークン・イングリッシュで「ハーイ、ヒア、コーク、プリーズ!」とカフェ中に響き渡る声で注文する豪傑だ。
「タイの混沌は私にぴったり!甘ったるい空気。美味しい料理」と笑う。「安宿に泊まって屋台で食べると生活費はとっても安い。一番経費がかかるのは、この娘だった。あははは」と隣りのお嬢さんを見る。
本業(?)は駅前のたこ焼き屋のおばさん。時々従事するホタテの耳釣りアルバイトで小金が貯まったので、タイを旅行するという娘に付いて来た。
「住所教えて。豊漁の時はホタテを送るから」と、ごそごそとかばんを探ってメモ帳が見つからないと言いながら、パスポートとペンを取り出した。
「え? メモしちゃだめ? だって、パスポートの注意書きを読んだけど、どこにもメモ禁止って書いてないよ」と真面目な顔。覗き込むと、出入国スタンプの横には既にいくつかのメモ書きがあった。なるほど、発想が違う。
海上自衛隊勤務だった旦那様は、春に早期退職し、2年間の中国留学に行ってしまったので、娘と二人で来たという。そして、彼女はさっぱり、きっぱりと言った。
「海上自衛隊では、ほとんど遠洋勤務。ずっと別居同然だったでしょ。3月に辞めて、家に一緒にいるようになったら、それは大変」
「一人でいることの寂しさには慣れるけれど、一緒にいるわずらわしさには慣れないのね」
「旦那の考えていることはわからない。私のこともわかないと思う。時々国際電話してきても言っていることがわからないから『もう電話しないで』と言ったの、電話料金が高いじゃない」
彼女のあまりにあっけらかんとした笑顔に、「そういうものですか」とただ相槌を打ち続ける私。隣りでは、「こういう母なんです」と娘さんが笑いながらフルーツサラダを食べている。
<安宿街カオサン通り>
北海道でたこ焼き屋と漁業のパートをしているという50代後半の女性は、化粧気のない小顔にショットカットが良く似合い、バンコクで買ったというバディックのカットソーとパンツを粋に着こなしていた。
初めての海外旅行だという。が、初めてにしては場慣れした度胸満杯。バリバリのジャパニーズ・ブロークン・イングリッシュで「ハーイ、ヒア、コーク、プリーズ!」とカフェ中に響き渡る声で注文する豪傑だ。
「タイの混沌は私にぴったり!甘ったるい空気。美味しい料理」と笑う。「安宿に泊まって屋台で食べると生活費はとっても安い。一番経費がかかるのは、この娘だった。あははは」と隣りのお嬢さんを見る。
本業(?)は駅前のたこ焼き屋のおばさん。時々従事するホタテの耳釣りアルバイトで小金が貯まったので、タイを旅行するという娘に付いて来た。
「住所教えて。豊漁の時はホタテを送るから」と、ごそごそとかばんを探ってメモ帳が見つからないと言いながら、パスポートとペンを取り出した。
「え? メモしちゃだめ? だって、パスポートの注意書きを読んだけど、どこにもメモ禁止って書いてないよ」と真面目な顔。覗き込むと、出入国スタンプの横には既にいくつかのメモ書きがあった。なるほど、発想が違う。
海上自衛隊勤務だった旦那様は、春に早期退職し、2年間の中国留学に行ってしまったので、娘と二人で来たという。そして、彼女はさっぱり、きっぱりと言った。
「海上自衛隊では、ほとんど遠洋勤務。ずっと別居同然だったでしょ。3月に辞めて、家に一緒にいるようになったら、それは大変」
「一人でいることの寂しさには慣れるけれど、一緒にいるわずらわしさには慣れないのね」
「旦那の考えていることはわからない。私のこともわかないと思う。時々国際電話してきても言っていることがわからないから『もう電話しないで』と言ったの、電話料金が高いじゃない」
彼女のあまりにあっけらかんとした笑顔に、「そういうものですか」とただ相槌を打ち続ける私。隣りでは、「こういう母なんです」と娘さんが笑いながらフルーツサラダを食べている。
お体大切になさって下さい。
人は恋愛をすると「詩人」になると言われますが、旅をすると「哲学者」になるのかもしれません。旅で出会った人に教えられることがたくさんあります。それで自分がもっと変われるといいのですが、相変わらずの自分にがっかりするばかり。ちえちえさんは今のその生活と日々を大切にしてくださいね。