見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

「寂しさにはすぐに慣れるけれど・・・」

2007-06-22 22:44:02 | タイ
カンボジア国境近くの食堂で声を交わした日本人の母娘と、バンコク安宿街のカフェで再び出会った。
           <安宿街カオサン通り>
北海道でたこ焼き屋と漁業のパートをしているという50代後半の女性は、化粧気のない小顔にショットカットが良く似合い、バンコクで買ったというバディックのカットソーとパンツを粋に着こなしていた。
初めての海外旅行だという。が、初めてにしては場慣れした度胸満杯。バリバリのジャパニーズ・ブロークン・イングリッシュで「ハーイ、ヒア、コーク、プリーズ!」とカフェ中に響き渡る声で注文する豪傑だ。
「タイの混沌は私にぴったり!甘ったるい空気。美味しい料理」と笑う。「安宿に泊まって屋台で食べると生活費はとっても安い。一番経費がかかるのは、この娘だった。あははは」と隣りのお嬢さんを見る。
           
本業(?)は駅前のたこ焼き屋のおばさん。時々従事するホタテの耳釣りアルバイトで小金が貯まったので、タイを旅行するという娘に付いて来た。
「住所教えて。豊漁の時はホタテを送るから」と、ごそごそとかばんを探ってメモ帳が見つからないと言いながら、パスポートとペンを取り出した。
「え? メモしちゃだめ? だって、パスポートの注意書きを読んだけど、どこにもメモ禁止って書いてないよ」と真面目な顔。覗き込むと、出入国スタンプの横には既にいくつかのメモ書きがあった。なるほど、発想が違う。
            
海上自衛隊勤務だった旦那様は、春に早期退職し、2年間の中国留学に行ってしまったので、娘と二人で来たという。そして、彼女はさっぱり、きっぱりと言った。
「海上自衛隊では、ほとんど遠洋勤務。ずっと別居同然だったでしょ。3月に辞めて、家に一緒にいるようになったら、それは大変」
「一人でいることの寂しさには慣れるけれど、一緒にいるわずらわしさには慣れないのね」
「旦那の考えていることはわからない。私のこともわかないと思う。時々国際電話してきても言っていることがわからないから『もう電話しないで』と言ったの、電話料金が高いじゃない」
           
彼女のあまりにあっけらかんとした笑顔に、「そういうものですか」とただ相槌を打ち続ける私。隣りでは、「こういう母なんです」と娘さんが笑いながらフルーツサラダを食べている。
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2 コメント

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何気ない言葉に重さが (ワイン)
2007-06-28 22:56:42
香港返還10周年記念行事の様子が、衛星放送ニュースで放映されていました。ちえちえさんの社会の先生も「だから世界は面白い」と今は笑っているでしょうね。
人は恋愛をすると「詩人」になると言われますが、旅をすると「哲学者」になるのかもしれません。旅で出会った人に教えられることがたくさんあります。それで自分がもっと変われるといいのですが、相変わらずの自分にがっかりするばかり。ちえちえさんは今のその生活と日々を大切にしてくださいね。
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地図帳を (ちえちえ)
2007-06-27 09:40:09
おげんきですか?地図帳を片手にこの日記を読むようになりました。しかし高校時代の地図帳と現在の国の数が20位違うと知りました。私にスコールを教えてくれた社会の先生は『香港をイギリスが99ヶ年間支配するという事は永遠に統治すると言う事。返還はしないと言う事』なんて事を教えてくれました。素直に言われたままを信じていましたが、返還された時「あーあれは違う意味そのくらい重要な事」って事を教えてくれていたのか!と考えました。今回の文章にいろんな事が詰め込まれていていろいろたくさん考えてしまいました。ある意味田舎のおばさんが(大変失礼ですが)こんなに哲学者と言う事。自分の今の生活を考えて見つめ直してしまいました。
お体大切になさって下さい。
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