上五島には、果たして今でもヤギはいるのか・・・
ヤギの中でもシバヤギは、外海地区が原産地で、キリシタンが上五島へ移住するときに、ヤギも一緒に連れて行ったのではないかと言われています。「かんころ」や「ゆうこう(柑橘類)」も同じく、キリシタンが外海地区から五島へ運んだのではないかと言われています。
かつては、外海地区にも、上五島地区にもたくさん生息していたヤギですが、すっかりその数は減ってしまいました。このままでは、シバヤギ種の継承も危ぶまれる状況だと言われています。
そこで、今回、「上五島には、果たして今でもヤギが飼育されているのか?」という、なんとも楽しげな調査に同行するご縁をいただきました。出津地区まちづくり協議会の杉山和利さんとの2人調査旅行です。
出発前の聞き込みによると・・・
小値賀の納島に、野生のヤギが多く生息していたので、上五島の耕作放棄地の除草のためにヤギをたくさん連れてきたが、増え過ぎて全て死んでしまった。もう今では、上五島では飼われていないのではないか・・・?
新上五島役場の農林課に電話で尋ねると、小野さんという方が、どうもヤギを飼っている、ということがわかりました。
そこで、小野さんに電話をすると、さらに古田さんという方が飼っている、ということがわかりました。
今回の旅は、この小野さんと古田さんを訪ねるところから始まりました・・・・
3月11日
まだ暗いうちに家を出発し、7時55分長崎港発の船に乗りました。海は穏やかで、ウトウトとしているうちにあっという間に上五島有川港に到着。
まず、青方の農林課を訪ねました。
農林課の方の話によると、
⭐️「仲知の沖にある前島にヤギが昔は多く生息していたが、繁殖し過ぎて全て殺してしまった。」
(のちに鯨賓館ミュージアムの高橋さんからも同じ話を聞きました。)
⭐️「曽根に10年くらい前にヤギがいたが、野犬や猪に襲われていなくなってしまった。」
⭐️「上五島町が、10年くらい前に、除草作業の手助けとしてヤギの貸し出しを行っていたが、フンや脱走の苦情がありやめてしまった。」
ということがわかりました。
午後から、調査開始です
まず、小串郷の小野敬さんをお訪ねしました。小野さんは、ここで、「くらしの学校 えん」(クリックでホームページ)という山村留学を主宰されていて、1年間子供たちを受け入れて、大自然の中で素晴らしい体験をする場を開いている方でした。
小野さん宅には、ヤギが3匹いました。
とても可愛がられているヤギで、子犬のようについてくる慣れているヤギでした。
この大きな雄ヤギは、島原から軽トラックに乗せて連れてきたそうです。他にも、鶏やポニーもいました。塩、薫製、ピザ焼き、豆腐、味噌・・・、なんでも食べるものは自分たちで作ってしまう。子供たちは、この自然の中で、動物たちととても仲良く、キラキラ光っていました。私たちにも、たくさんのお話をしてくれました。小野敬さんも、パートナーの千鶴さんも、とっても素敵な方。楽しい時間をありがとうございました。
次にお訪ねしたのが、新魚目町の古田正人さんご夫婦。またまた素敵な方です。
ここで、海水から塩を作っています。この大きな窯で海水を煮詰めます。
畑をして、自給自足の暮らしをしていらっしゃいます。今では珍しくなってきている、昔ながらの手法によるかんころ餅をご馳走になりました。
古田さん宅には、ヤギが4匹いました。
と、と、ところが、お訪ねした翌日にこのヤギが2匹の赤ちゃんを産みました。だから、古田さん宅には、ヤギが6匹!!
ここのヤギも、大変可愛がられていて、とても慣れていました。
さて、かんころ餅とさつま芋をいただきながらお話を聞くと、他にもヤギを飼っている方がいるとのこと。
番岳の松下さん宅へ、早速連れて行ってくださるというので、そのお宅はお留守でしたが、ヤギを見せていただくことになりました。
このヤギも、大変人に慣れていて、可愛がられていることがよくわかります。
小屋にはきれいな木屑が引き詰められていて、大事にされていることがわかります。みんな、すぐに顔をよせて甘えてきました。とてもよく慣れているヤギたちです。
ヤギというより、ウサギのような感じでしょ
松下さんのお宅には、ヤギ5匹。
小野さんと古田さんからの情報により確認できたことは、
広ノ谷(ひろんた)のご夫婦のところに、ヤギ2匹。
舟隠しの干切(ひぎれ)の女性が、ヤギ1匹。
これらのヤギは、古田さんからのヤギということでした。
そうこうしているうちに、鯨賓館ミュージアムの高橋さんからお電話があり、仲知の山添さんという方が、飼っているかもしれないとのこと。行くしかない!!
上五島の最先端、仲知の津和崎の山添さんをお訪ねしました。
山添さんは、突然訪ねてきた私たちにびっくりしたことと思いますが、大変丁寧にお話ししてくださいました。
山添さんのところでは、昔からヤギを飼っていたけれども、3年くらい前に逃げてしまったということ。時々海辺にヤギがいるのを見かけたが、どうしても捕まえられないとのことでした。メスが3匹なので、繁殖もできないだろうとのことでした。仲知には、昔はたくさんのヤギが飼われていたそうですが、今では1匹も飼われていないということがわかりました。・・・でも、野生のヤギが3匹どこかにいるかもしれない
1日目の調査はここまで・・・。時間はもう6時半を過ぎていました。くたくたです。ホテルに戻って、ワインを飲んで、おやすみなさい。
12日は、雨
まずは、杉山さんの昔からのお友達の、鯨賓館ミュージアムの高橋さんを訪ねました。
世界遺産の話、かんころの話・・・、話は尽きません
では、調査を続けようとしたところに、電話が入り、海が荒れているので帰りの船が欠航とのこと。一便前の船は運行とのことなので、仕方がなく、変更することになりました。
あとは、もう調査の時間がないので、電話でお尋ねするしかありません。昨日からの情報で、理容宮田さんのところにいるかもしれないとのこと。宮田さんにお電話をすると、またまた快く応対してくださいました。以前、メスヤギを2匹飼っていたが、事情により、岩松の方にあげたということ。多分今でも飼っていると思うとのこと。そのあと、観光物産センターにお尋ねの電話をすると、岩松の宿の浦で海辺の空き地に繋がれた2匹のヤギを見たという。なんと、この2匹が宮田さんから岩松に渡ったヤギ。岩松宿の浦にヤギ2匹が確認できました。
尾上DKKさんにも電話でヤギ1匹を確認。
古田さん情報により、奈摩の渡辺さんのところにもヤギ1匹を確認。
今回の調査の結果、上五島には21匹のヤギが飼われていることがわかりました。
上五島で出会った方は、みなさん優しくて、そして、ヤギをとても可愛がっていました。
突然の訪問なのに、忙しい中なのに、丁寧にお話をしてくださり、本当にありがとうございました。
帰りの船は、ひどくひどくひどく揺れ・・・、私は大変なことになりました・・・あとは、ご想像にお任せします
番外編は、またの機会に
今回の調査は、セブンイレブン記念財団の助成を受け、「NPO法人夕陽が丘そとめ」による調査でした。