公務員がFXのせいで懲戒処分になることもあります。
実際少なくない職員が懲戒処分を受けていますし、一部は報道されてもいます。
FXで懲戒処分を受ける公務員
FXで懲戒処分となる公務員は少なくありません。
代表的なのが職務専念義務違反のケースです。
公務員がFXをすること自体は問題ないことなのですが、勤務時間中の取引は問題行動になります。
職務専念義務違反は懲戒処分になりうる
公務員は、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府・地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければなりません。
勤務時間中の注文やチャートの確認は職務専念義務に違反することになります。
出張中や移動中も勤務時間ですから、例外ではありません。
トイレや喫煙のついでに取引、というのも職務専念義務違反です。
また、勤務時間外であっても、職務上の注意力を失わせるようなことは職務専念義務に違反することになります。
深夜まで取引をしていて、それが元で勤務に支障が及べばそれも職務専念義務違反です。
民間企業の従業者にも就業規則等で職務専念義務が課されていますが、公務員はそれが法定されているのです。
職務専念義務は服務上の義務ですから、これに違反すれば懲戒処分の対象となります。
実際に職務専念義務違反を理由に懲戒処分となる公務員が後を絶ちません。
FXで懲戒処分になる公務員
懲戒処分は、職員に非違行為があったとき、その職員に対する制裁としてなされる処分をいい、軽いものから次のものがあります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。
- 戒告
- 減給
- 停職
- 免職
懲戒処分の処分基準
懲戒処分の量定は懲戒権者、通常は任命権者の裁量で行われます。
ただ、懲戒処分は公務員の身分保障に重大な影響を及ぼす行為なので、懲戒処分には予め基準が定められ、それに基づいて行われることになっています。
そのため、人事院・各自治体は「懲戒処分の指針について」等の基準を定めています。
人事院の「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68)によれば、職務専念義務違反にかかる処分の標準例は「勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする」としています。
したがって、国家公務員が勤務時間内にFXの取引等を行い、職務専念義務違反となった場合の懲戒処分の量定としては、減給または戒告が標準となります。
また、地方公務員の場合には、自治体ごとに判断が分かれるのが原則です。
ただ、実際のところ他の自治体や国とのバランスをとることになるので、国家公務員と同程度の量定になるでしょう。
FXのせいで首(懲戒免職)になることも?
公務員がFXで職務専念義務違反となった場合、標準的には減給または戒告ですから、首(懲戒免職)よりもずっと軽い量定になります。
この点、処分の量定にあたっては「適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする」とされ、理屈の上では首(懲戒免職)となるおそれもないわけではありません。
例えば、過去にFXのせいで懲戒処分となっていて、その後も同様のことを繰り返すようであれば、首(懲戒免職)になることもあり得るでしょう。
例えば不動産投資に関して首(懲戒免職)になった事例が参考になるかもしれません。
これは不動産投資に関して減給処分を受けた職員が、その後改善命令を受けたにもかかわらず期限までに改善をしなかったために懲戒免職になったという事例です。
不動産投資に対する処分は減給でしたが、その後の改善命令に従わなかったことに対しては免職となっています。
厳密にいえば不動産投資に対する処分ではありませんが、首(懲戒免職)となった事例です。
同様に、FXの場合でも首(懲戒免職)もないわけではないといえるでしょう。
公務員は職務専念義務を遵守
公務員がFXをすること自体には問題ありません。
ただ、勤務時間中の取引等は懲戒処分の対象になりうる行為です。
懲戒免職になることこそほとんどにありませんが、懲戒処分になるおそれのある危険な行為です。
公務員はFXを、職務専念義務に違反しないように、気をつけて行いましょう。