金曜日の夜に若い知人と会って、夏コミ(C102)の打ち合わせも兼ねてお酒を飲んだ。
彼は僕からするとちょうど息子に相当する年齢で、昔職場で知り合い、お互いにオタクと知って親しくなった。これまでにも何度かコミケの手伝いを頼んだことがある。彼には今回もサークルスペースの設営、買い物、休憩時の店番等を依頼するので、サークルチケット(出展サークル専用通行証)と現金(買い物用)を受け渡し諸注意事項の申し送りを行うために一席設けたのだ。
過去にはお互いに好みの同人誌を十冊ずつ居酒屋の個室に持ち込んで、互いに品評しつつ酒を飲む、とかよくやったものだ。
最近はコロナ禍で居酒屋の「個室」概念も様変わりしたのだろうか、引き戸できっちりと間仕切りをして閉鎖する、文字通り「個室」イメージのスタイルから、カーテンのようなもので簡単に仕切っただけの「個室」に変わったような気がする。今回も「個室」の名前で店を選び、席を予約してみたが、後者のスタイルで少し残念だった。前者のスタイルでよく利用した居酒屋があったのだが、こちらは残念なことにコロナ期間中に閉店したようだった。
前者を完全個室と呼ぶことにしよう。完全個室だと、持ち寄った同人誌を床に拡げることが出来るのだ。肌色成分の多いフルカラーの表紙を愛で、ときどき刺激的なページを開いては「おお、これはなかなか」などと談笑しつつ酒を飲むのは、なかなかいいものである。簡易個室だと実質的にテーブルと椅子だけ、それも狭いので、こういうことはできない。お店の人が個室に来るときだけ同人誌をばっと隠したり、ヤバい表紙のは裏返しにしたり、上に大人しい本を載せて目隠しする。それが間に合わなくて店員さんに目撃されてしまったときはは「えへへ」と愛想笑いを浮かべて誤魔化す。そういう感じだった。
さて今回、彼と会うのは冬コミ以来である。彼と同じようなペースで飲んでいて、すぐに追いつけなくなってしまった。
「あれ? 前はこんな感じじゃなかったぞ」と内心で焦る。
今までは年齢が若い分、食べるのは彼の方で、お酒は飲み慣れている僕の方が進む、という配分だった。それが、今回はそうではなくてどちらも彼の方が上になってしまっていた。二時間制で飲み物のラストオーダーを教えられても、じゃあ最後にあと一杯、という気分になれなかった。アルコールに弱くなったのではなく物理的にお腹に入らない。そういう感覚だった。僕は滅多に外では飲まない。もっぱら宅飲みなので、こういうことになっていたと気が付かなかった。
年長者から「歳を取って飲めなくなった」という話を何度も聞かされて来た。それがいよいよ自分の身にも起こったのだろうか。
「こういうことだったか」
何かを自覚するときはいつもこうなのだ。
そういう訳で、夏コミに向けて軽く打ち合わせのつもりが、軽く打ちのめされた夜になってしまった。