鉱石ラジオ

艦これ二次創作小説同人
C105 日曜日 西地区 せ-27b(西2ホール)

通り雨のことなど

2023-08-16 23:38:45 | 日記
台風の余波なのでしょうか、今日も東京地方はざっと降ってさっと上がるの繰り返しでしたな。
午後、野暮用がございまして都心の裏通りを歩いております。と、上空に真っ黒な雨雲が流れてきたなと思ったとたんにばらばらっと雨粒が落ちて参りました。天気雨、通り雨、と言うのでしょうか。晩秋の京都で時雨れるのならご褒美みたいなものですが、盛夏、熱暑の東京ではそんなたいそうな風情はございません。一雨来ていっそ涼しくなってくれればまだ良いのですが路地裏もアスファルトですっかり舗装されております。降ったそばから気化した雨水がむんむんと立ちこめるばかりでいっそう不愉快でありますな。まあ、地面のあるところならもう少し違うのかも知れませんが。
雨の通り過ぎるタイミングが分からなくて、しばし他所様のマンションのエントランスの庇の下に避難させていただいております。タオルハンカチを出して、汗やら雨粒やらを拭っておりますと、ちょうどそこへ犬を連れた品の良いご婦人が帰ってこられました。ザックリとした出で立ちでしたが、その趣味と、連れ歩いた小型犬の良くしつけられた振る舞いを見れば、そのへんのオバサンとは訳が違うことくらい私にでも分かります。その女性に、不審そうな、しかし敵意のない目で見つめられたりなんかしまして、どうもこういうとき「怪しい者ではございません、少し雨宿りさせていただいております」などと言葉にするは気恥ずかしいモノですな。ワタクシ、こう見えてシャイなんです。帽子(言い遅れましたが降り出すまでは好天だったので、このときの私は帽子を被っておりました)の庇に手を添えてこくっと会釈をするのが精一杯です。幸い、ご婦人にはそれで納得していただけたのか、やがて彼女はオートロックの向こうに消えました。いやはや緊張いたしました。はい。
……と言うか、これでは余計に不審者ですな。

依然として雨は止みません。そうこうしておりますと内側からオートロックの開く音がします。今度は誰が出てきたのだろうと心配になって振り返りますと、何と先ほどの女性です。そして手にしたタオルとビニール傘を私に差し出して、こう言うのです。
「いきなりの通り雨でさぞやお困りでしょう。さあ、どうぞこのタオルで汗を拭いて下さいまし。もしすぐにでもお出掛けになるのでしたらこちらのビニール傘もお使い下さい。どうせ安物です。それとも……、もしお時間があるのでしたら、少し上がって休んで行かれてはいかがでしょうか。冷たい麦茶など差し上げましょう。主人は仕事で、夜遅くまで帰りませんの……」

などということはまったくなくて、雨が上がったのを機に、警察を呼ばれる前にすたこらさっさとばかり、そこから出たのでした。

終わり(笑)
コメント
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