何度も目の前を通り過ぎるいっくんを見ながらのんびりと、私はご近所のママと立ち話をしていた。
夕方の車通りが盛んな時間。
まだしっかりと端に寄らない落ち着きのないいっくんから目を離すわけにはいかない。
案の定、車の脇をフラフラとすり抜けたり、引っ張られるように吸い寄せられたりと、見ていてハラハラである。
ふざけたように車に近寄るいっくんに注意をする。
何度かそんなことを繰り返すうちに、さすがのいっくんも私が鬼になる気配を察知したのかまじめに端に寄るようになってきた。
「ちゃんと出来たら、その場でほめましょう」
確か、ペットの飼い方の本にそのように書いてあった。
私はすぐにいっくんを褒めようと自転車に駆け寄ったのだが、追いかけられたら嬉しくなって逃げてしまうのがいっくんわんこである。
勢いをつけて自転車の速度を上げたいっくんが宙に舞った。
一瞬、ジャックナイフの体勢に入った自転車を乗り越えたいっくんは、見事に顔から着地!!
激しい着地シーンと同時に響くいっくんの叫び声。
すぐさまかけより抱き起こすと、大きくえぐれたおでこから血が流れ出す。
「ぎゃー!!!!!!!」と、血が大の苦手な私も心の中で叫んでいたが、「こいちゃん、タオルー!!」と何とか指示を送って、傷を触ろうと泣き叫ぶいっくんを必死になだめた。
血はみるみるあふれ出し、耳に向かって流れ、反対の目に向かっても流れだし、まさに流血状態。
こいちゃんのバトンタッチでティッシュを持って来てくれたお友達ママは、片手に9ヶ月の娘さんを抱いた状態で走ってくれた…。
とにかくテンパっていた私はティッシュをひっぱりだし、傷を押さえる。
その場に居合わせたママとご近所さんに後をお願いしてから、近所の病院に滑り込む。
必死に私の重いかばんといっくんの靴を持ってついてきてくれたこいちゃんが、何だかとっても頼もしい。
受付でいっくんを見るなり保険証も出す前に外科に通され、処置が施された。
ティッシュをガーゼに変えてもらったいっくんは少し落ち着いた様子であったが、診察を受け、消毒を受けるあたりから再び泣き始め、
「ホチキスでとめますね…」と診断され、私が外に出されるとすさまじいい悲鳴が院内に響き渡った。
大きく穴のあいた部分の皮膚をひっぱって、ホチキス2針で止められたいっくんは、痛みのあまりすっかりパニックに。
念のためレントゲンを撮ったが、まるでクラゲのように歩かず、座らず、で看護婦さんもちょっとキレ気味。
その間中泣いていたのだから、可愛そうなようなイライラするような…。
新しいガーゼを当ててもらい、骨に異常もなく、こけてすぐに泣いたことからひとまず安心して帰宅。
その夜は、皆くたくたで眠りについた。
そして翌日。
再び病院に行き、血で染まったガーゼを取り替えてもらい、
「万が一はがれたら来院してくださいね。それまでは触らないで」
と、今度は密着タイプの傷テープに取り替えてもらって幼稚園に行ったいっくんだったが、帰宅したいっくんのおでこを見て、再びびっくり。
朝は乾きかけていたはずの傷から、再び血が!!!!!
くらくらする自分を叱咤激励して、丁寧に理由を聞いて再び私はぶっとんだ。
何と、幼稚園でお友達と叩き合いになり、おでこを何度もたたかれたというのだ。
どうしてー…。
「どうして先生に言わないの!!」と聞く私に
「ん…いっくんも、お友達たたいたし…」
と、恥ずかしそうに「てへへへ」と笑うではないか。
うしろめたさから、黙っていたというわけか…阿呆…。
前日にあんなに痛い思いをしたのに、まさかおでこの傷を忘れていたんではなかろうな!?
呆れてしまい、あまりのショックに口数も少ない私は、再びいっくんの手をひいて病院に行くことに。
連日通うにぎやかな腕白坊主は看護婦さんにもすっかり覚えられているらしく
「また!?どうしたの!?」と廊下で声をかけられる。
もう、本当に…。
そしてまた病室で叫び声を上げつつ消毒をされるいっくん。
いい加減、学習してくれないと、私も神経がもちそうにない。
あぁ、男の子って…………。
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台風一家
☆ユメ☆
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