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台風一家

マルコポーロ

一昨年だったと思うが、「アカチャンホンポ」に行ったら、商品の購入金額によってくじ引きや、プレゼントの引き替え券を配るイベントを行っていた。
日日草かスミレか何かの鉢花とタダで交換出来る券をもらったのだが、その日は生憎ものすごい人で、すでに鉢植えが出払っていた。
おまけに生花店の店員も忙しさに追われていたとかで、折角交換しに父自ら足を運んだのに「すみませんが、イベント用の花の変わりにここら辺の花を持って帰ってもらえますか」とある一角を指定された。
一角はすかし百合のスペース。
すかし百合は花の時期どころか、芽もろくに出ておらず、ビニール製の鉢に1センチかそれに満たない小さな球根の頭が確認されるばかりだった。
花に詳しい訳ではなかったので、適当に5鉢ほど選んで帰宅。

植えると今まで姿も見えなかったのに、地中からすくすくと芽が出始めた。
貰ったばかりで育て方もよく分からず、完璧な出来ではなかっただろうが、気づいたときにはこいちゃんの背ほども伸び、可愛らしいピンクや黄色の花を付けたため、大いに気に入った。
結局2株ほどはいっくんにちぎられ、スコップで粉々にされてしまい、生き残ったのは3鉢だった。

そして今年も球根から美しいすかし百合が花をつけた。
去年、1個の球根から1本の花が咲いたが、分球したらしく2本ずつ花がさいていた。
ところが、他のすかし百合よりも遅くにつぼみが出来、おまけにやたらと背が高く葉っぱの大きなすかし百合が2本咲いているのだ。
ランダムに持って帰ったすかし百合である。
きっと種類が違えば、咲く時期にも違いがあるのだろう。
軽く考えて毎日水やりをしていたが、7月14日、つぼみの開いた花を見て驚いた。
他のすかし百合よりも背が高く、淡いピンクの花自体がとても大きく(20センチ)、芳香がすばらしい。
庭の隅に植えているにもかかわらず、こいちゃんが「咲いたねぇ!!」と感嘆の声を上げたほどである。
これは今までにない見事さである。
丁度実家に帰省する日であり、こんなところで終わってしまうのはあまりに見事な花だったので切り花にして実家に持ち帰ることにした。

適当な入れ物が見あたらなかったので牛乳パックにさしてビニール袋に入れ、車に揺られて遙か300キロの旅をし、実家に到着。
車内中に広がる見事な芳香と美しい花を祖母に見せつつ「うちで咲いたすかし百合だ」と自慢した。
しかし、祖母は納得がいかない表情。
「こんなすかし百合はみたことがない、葉の形が違う」と首をひねるのだ。
庭に出て祖母の育てたすかし百合を見せて貰ったところ、確かに、持ち帰った「すかし百合」は4倍ほども葉が大きいようなのだ。
しかも家族が驚いたのはその花の大きさと芳香だった。
キッチンからダイニングから広範囲に、その花の香りが広がるのだ。
みんなが首をひねる中、17時過ぎに仕事から帰宅した父が花を見るなり「これはカサブランカだ!」と言う。
父の大好きな花だったらしく、その芳香と美しさを褒めちぎった。
ところが、さらに調べていくとカサブランカは白しかない事が判明。
この花ははっきりとしたピンク色である。
すでにすかし百合ではない事は判っていたので、一体この花は何なのだと、物議をかもした。
3日間、家族中で憶測が飛び交い、漸くインターネットで調べたところ、似たような大きさと模様の花で「ティアラ」と言う品種があった。
しかし、花粉が退化している特徴を満たしていなかったため、同じくピンク色の「マルコポーロ」ではないかと言う結論でで落ち着いた。

イベント用の花を切らしていたとは言え、もともとはタダで貰ってきた花である。
しかし、その美しさは、見飽きるほどの花を庭に生やす実家の父が「この花を家中に咲かせよう!」と言い放つほどすばらしい。
インターネットで調べると、「マルコポーロ」だとして、1球500円はする代物である。
イベント用の日日草と比べてもその差は歴然である。
すかし百合に間違えて混ざっていたのか、貰ってきた人間に花知識がなく自然に混ざってしまったのか、店員がエリアを間違えてしまったのか、理由は定かではないが、とにかくこのハプニングにはただただ有り難い、嬉しい誤算と言うしかない。

そしてふと思い返すのだ。
いっくんが指で掘り返し、スコップでつぶしてしまった残りの2球は一体何の花だったのだろうか……と。
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