奈良にPキャンプ

こいちゃんの生活発表会の翌日から早速Pキャンプに出かけた。
行き先は例によってほとんど考えておらず、風のむくまま気のむくままといった感じ。
車を奈良方面に走らせて梢がいつもメインとし、とても楽しみにしている温泉に向かった。

だらだらしながら夕方頃に「大宇陀温泉あきののゆ」に到着した。
こいちゃんもいっくんも大喜びだったが、例のごとく二人とも私についてきてしまった。
どんなに伴侶が牛乳でつったり、ご機嫌をとっても頑として首を縦に振らず、結局私は二人の子供を連れて入っていった。
言うことを聞くことを条件にしつこいくらいおとなしくするように注意してから二人に服を脱がせたり、タオルを持って入るように指示したりしていたが、いっくんはおもちゃを持って入りたがったりすでにわがままいっぱい。

浴槽は混んでいて、地元の人たちもかなり多いようだった。
薬草風呂や水風呂、サウナや露天風呂など広さも適度で子供たちも大喜び。
私がすっかりのぼせてしまい、ついていくのもフラフラしているのに、二人は次はあっちの風呂、今度はこっち、とまったく出ようとしない。
頭も体もすっかり洗っていたが、熱い浴室内を連れまわされて、もう一度すべて洗いなおしたほうがいいのではないかというくらい汗をかいた。

中の熱さとは裏腹に外の露天風呂は強い風のため、相当寒く、私はまたもやしり込みしてしまった。
しかし、こいちゃんは露天風呂の奥に続く塩サウナなる部屋が気になるらしく、冷たい敷石の上を何度も行ったり来たりする。
私はついていくのもいやでひたすら露天風呂の湯の中につかり様子を眺めていた。
いっくんは空を眺めたり、タオルを湯につけてはいけないのかなどと聞いたりしていたが、比較的おとなしく、私と一緒に露天風呂でのんびりと雲のかかった月を眺めていた。
と、こちらに向かっていたこいちゃんが、急に消えた。
洗髪した長い髪をまとめていたタオルだけが湯船に浮かんでいて、その下でこいちゃんはもがいていた。
真っ暗な露天の風呂の中の段差が見えずに足を踏み外してしまったのである。
その段差に座って大声で話をしていたおばちゃんたちはおぼれるこいちゃんを見つつ、何事かと手も出せないでいる。
慌てて引き上げると頭の先までずぶぬれのこいちゃんは泣きながらも水は飲んでいないらしく「おめめ開けちゃったよ～」とびっくり顔だった。
「あけたら何が見えた？」ときくと「まっくらだった」といっていた。

おぼれたことで懲りたかと思いきや、それでもまたいろいろなお風呂をはしごしてやっと説得して脱衣所に出たころには本当に私はへとへとだった。
ほかほかの体がさめてしまわぬように子供たちにもたくさん着込ませてから車に乗り込み、すぐ近くにある道の駅「大宇陀」で食事を済ませた。
車に戻るとすぐにエアーベッドを膨らまし、シュラフに滑り込んだ。
最近購入したエアーベッドは段差がなく、しかも広く空間を利用できるため、寝心地がよく、すぐに夢の世界に…。

前回の反省からドアもきっちりとしめて眠ったところ温かくて、子供たちも朝までトイレにすら行かなかった。
こいちゃんに言わせると自宅より暖かいらしい。

翌日は近くの公園でバーベキューの予定でオークワで肉やたまねぎなどの買い物をしていたのだが、どうもこいちゃんの様子がぼんやりとして元気がない。
風も強かったし、寒かったので、ここで風邪をひかせては大変、と急遽予定を変更し、バーベキューをせずに大阪に帰ることになった。
子供たちにばれるとがっかりするだろうと思い、適当な公園でとまったりしながらごまかしつつ帰宅しようと思っていたら、奈良公園に通りかかった。
見ると、たくさんの鹿がえさほしさに大人たちに群がっている。

車の中でぼんやりしていた子供たちに「鹿やで！」と見せてやると大興奮。
「おりよう！」といい始め、急遽子供たちを下ろすことになった。
もちろんまわりに駐車スペースなどがなかったので、伴侶は子供たちの気が済むまでなら公園周辺をうろつくことになってしまった。
下りてみるとしかは角が切られているといっても立派な体格で気も荒い。
こいちゃんは紙一重で交わしたが、いっくんは突き飛ばされて泣いていた。
しかし、それでもよっていくのは学習能力がないというよりも動物が面白くてしかたないのだろう。
私のところにも突進してきたが思わず対決してまい、ブロックして威嚇したところ、鹿は去っていった。
何をやってるんだか…。
結局えさも買わずに１時間もそこで鹿を追いかけたり追いかけられたりしながら遊び、子供たちは大満足だった。
「動物園に行った」と…。

よく幼稚園で休みの日に何をしたか先生に聞かれることがあるという。
温泉でおぼれたり鹿に追いかけられたこいちゃんはこの日のキャンプをなんと表現したか聞いてみたいものだ。