こいちゃんは海には行きたがらず、買ってきた首飾りや髪留めを整理したり、自慢したり、と超インドアに過ごした。
海の次は山である。
夏が近づき、うっそうと草が生い茂り、歩きにくいばかりか虫たちもかなり沢山集まっている。
虫も草もものともせず奥深くに分け入り筍を取り始めたおじいちゃんについて歩き始めるいっくん。
始めは元気だったいっくんだが、しばらく歩いたところで、引っ付き虫が大量にズボンについているのを見つけ悲鳴をあげた。
「いたい、いたい、とって~!」と叫びつづけ、とうとう「だっこ~」と情けない発言。
ちくちくした引っ付き虫に、噛付かれたとでも思ったのか、一歩も進めずひたすら叫んでいた。
しばらく放っておくと慣れてきたらしく「マンベキョウで見る」(顕微鏡で見る、といいたいらしいのだ…)と引っ付き虫を採取していた。
残っていたミカンを取り、おやつを食べ、山を降りるとひいばあちゃんに拡大鏡を借りて引っ付き虫を見た。
ぎざぎざの刺を「うぁ…」とこわごわと見つめてから、痛かった理由がわかってちょっと安心したようだった。
乱暴なくせに臆病なところがあるいっくんは、実に単純。
来月は「もう山には行かない」と言いそうである。