男子達は釣りをしに海にでた。
釣った魚をおひるごはんにしようと言うことだったので、あまり期待しないで待っていた(!)のだが、予想に反してかなりの釣果だったようである。
小魚も沢山釣れたようなので天ぷらにすることになり、こいちゃんも大変喜んだ。
釣れたて、揚げたての天ぷらが美味しくないわけがない。
天ぷらの準備でバタつくおばあちゃん。
揚げ物を任されてこれまた忙しそうなこいちゃんの傍で珍しくおじいちゃんが指にバンドエイドを貼っているではないか。
いつも頑健 屈強なおじいちゃんが珍しい…。
しきりに痛がっているようで何事かと聞いてみるとびっくり。
釣りの最中にゴンズイに刺されたと言うのだ。
調べてみると、ゴンズイなる魚はナマズ目ゴンズイ科ゴンズイ属に分類される海水魚。
ゴンズイが持つ毒は強力で、毒棘が刺さると重い火傷を負った時のような、激しい痛みに襲われると言う。
水膨れなどの症状が出て、2回目以降はアナフィラキシーショックにより命の危険に晒されることもあり得る。
患部が壊死したり、最悪の場合死に至ることもあると聞いて皆んな段々と心配になってきた。
美味しそうな紫蘇の葉天ぷらが上がる中、おじいちゃんの痛み度合いも増していくようで…。
病院嫌いのおじいちゃん、勿論病院に行くなどと言うわけもなく、しかめっつらは濃いものになっていくではないか。
さらに色々調べてみると、患部を40~45℃の湯につけ、毒(タンパク毒)を不活性化させれば緩和するとの記述を発見。
そうこうしている間に、天ぷらが美味しそうに上がった。
釣りたて揚げたて、これは堪らない。
はりっと揚がった紫蘇の葉と、キスの天ぷらが何とも贅沢なお味である。
いくらでもイケる。
難しい顔をしたままのおじいちゃんは熱めのお湯をコップに入れて持ってきてもらい、そこに指を突っ込んだ。
さて、部屋に入ると寂しそうなツバキちゃんが…。
「熱!!熱〜!!」とコップから指を出したり入れたりしながら頑張って指を浸すおじいちゃん。
お湯の温度なんて分からないから到着時は熱湯である。
格闘すること数分間、何とか落ち着いて指を浸せるようになってきた。
その間にもどんどん天ぷらが揚がる。
始め難しい顔をしていたお爺ちゃんだったが、十数分後に「痛くない!!」と驚いた表情を見せた。
すごい、熱で毒を分解するって、本当に可能なのだ。
痛みや吐き気等が続く場合は、医療機関を受診しなければ大変な事になるようだったが、その心配もなさそうで一同胸を撫で下ろした。
お爺ちゃんはゴンズイの天ぷらを口に運び「こんにゃろうめぃ!!」
仇はとった?が、ゴンズイ恐るべし…なのである。
さて、部屋に入ると寂しそうなツバキちゃんが…。
そうだった、少し肌寒かったので一緒に庭に出なかったのだ。
寂しんぼうのツバキは、長時間一人にすると毛を抜いたりしてしまう。
この日は短時間だったので大丈夫だったが、甘えん坊でちょっと大変である。
会社に行く時は平気なのが不思議である。
満腹のお腹を摩りながらツバキの小屋を掃除する私であった。