読書とかいろいろ日記

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『お世継ぎのつくりかた』 鈴木理生

2011年07月08日 | 読書日記
お世継ぎのつくりかた 大奥から長屋まで 江戸の性と統治システム (ちくま学芸文庫)
鈴木理生
筑摩書房

¥1,100+税 筑摩書房(ちくま学芸文庫) 2010/9/10発行
ISBN978-4-480-09320-2

鈴木先生、三冊目。
もともと、この本こそが宮田珠己の絶賛本だったのだ。私はこの本の前に鈴木先生のほかの著書に寄り道しちゃったけど。
うん、おもしろかった!




> 江戸時代から昭和戦前までの東京の下町には、性の自由を得られる施設は女性用のほうが多かった。また「手に職を持ち」働きのいい女が、好みの男を自宅に飼っておく風潮が普通のことであった。これがいわゆる「髪結いの亭主」[…](61頁)

男を飼うのか。
普通なのか。
すごいぞ、江戸。



> 江戸時代でなく昭和戦前まではこのような女性が「おばさん」と呼ばれながら、町内の相互扶助で食べていけた。慈善というのは階級差のある者が顔見知りの範囲で行うお情け行為だが、相互扶助とは鶴屋南北が脚本に書いたように町内の「若い連中」たち顔見知り同士の助け合いだった。(103頁)

下町人情の正体は、異性の共有。できた子供は「町内抱えのガキ」。身に覚えの連中がみんなで仲良く支払った。それがご近所の底力。
長屋の人情を持ち上げてみせる人たちは、こんなこと聞いたらびっくりしちゃうね。



> 『葉隠』がいう「武士道とは死ぬことと見付けたり」の真意はこの一点にあったということである。武家の『棒地方』で代表される、つまり生活苦や業務繁多ではなく、女性の空くことなき悦楽の追及を満たすための、男性の死闘の手段・方法の普及の上に、封建制度が開花していたのが江戸時代だった。(149頁)

梅毒進行とセックス過多による衰弱死が武士の死因の上位。
なにしろほんの一部を除けばおおかたの武士の勤務は、とにかく暇。大量の武士に仕事をいきわたらせる必要があったため、今でいうところのワークシェアリングで、たとえば『鸚鵡籠中記』を著した朝日文左衛門は月に三日しか登城日がない。
有り余る余暇というか本務は、子作りに励むことだったのである。
そのために死に至ってもやむをえないほど、子を残すことこそが大事だった。……そ、そうかぁ???


そーゆーお世継ぎ絡みからちょっと離れて。
勝海舟が明治新政府の時代に死去の直前まで影響を与え続けた理由について。

> 維新の元勲・高位高官たちの前身は、いずれも足軽・小者の類で、国家の財政についての勘定ができないものばかりだったから、明治三十年で破綻を迎えたと[…](265頁)

経験者でないと、組織の統治はできない。
ああ、なんだか今の日本政府を見ているかのようだわね……。

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