『お行儀の悪い神々』 マリー・フィリップス(青木千鶴・訳)
¥2,000+税 早川書房 2009/3/25発行
ISBN978-4-15-209011-9
落ちぶれたギリシャの神々が、今はロンドンに住んでいる。
力は衰え、薄汚れた家で、しかしあいかわらず一族仲悪く好き勝手に生きている。
アプロディテはテレフォンセックスのアルバイトに明け暮れ、アルテミスはジョギングがてらの犬の散歩代行で小銭を稼ぐ。アポロンは霊能力者としてテレビに出ようとし、エロスは人間の信仰を集めるキリストに自分もハマり、ヘルメスはバイクで死者を黄泉の世界の入口へ運ぶのに忙しい。
ある日、アポロンはアプロディテを怒らせて、その報いとしてエロスに矢を射られて人間の女性に恋をする。相手の女性アリスは、ニールという恋人がいるが、二人とも超オクテでいまだに手を握ったこともない。
アリスを手に入れようとするアポロンの暴走で、地球存続の危機にまで発展し…。
アプロディテの品のないことと言ったら、さすがイギリスだわ。
アポロンの自己中心的思考もおみごとで、そのほかの神々のアタマ悪いところもいかにもギリシャ神。
いやーみょうちくりんな小説だ。
> 「これじゃ無理よ。使い物になるわけがない。よく見てごらんなさいな。こんなに痩せっぽちで、ネズミみたいな顔をしていて、背だってずいぶんと低いわ」(240頁)
アリスを救い出すための勇者としてニールがふさわしいかどうかを、ニール本人の前でこんなこと言うアルテミス。さすが神様、人間相手に遠慮なんてありません。このあともネズミみたいな顔、齧歯目みたいな顔、と連発。絵にならない男、ニール。オタクです。
> 「おれはただ、あんたから赦しを得られればと思ったんだ。そうすれば楽になれるとエロスが言ったから。おれがあやまったら、あんたは赦す。そういう取り決めになっているもんだと思ってたんだ」アポロンは口ごもるように言った。
「そんな取り決めなどあるもんか!」
アポロンはすくみあがった。威風堂々の猛者たる肉体をちぢこめて、校長を前にした気弱な男子生徒みたいに鼻を鳴らしていた。
「君は、本当に悪いことをしたと思ってるわけじゃない。罪の意識から逃れたいだけなんだ」
「それじゃいけないのか?」
「当然だ。謝罪というのは、自分が間違いを犯したことを認め、そのあやまちを悔いたときにするものだ。その償いをするためのものだ。自分が楽になりたいというだけの理由で誰かにあやまったって、なんの意味もない。謝罪というのは、自分ではなく、相手の苦しみを取り除くためにするものだからだ」
「どうしてこのおれが、あんたのためになにかをしなきゃならないんだ?」アポロンはおもむろに背筋を伸ばした。「あんたがどれだけ苦しもうが、おれの知ったこっちゃない」(287頁)
う~~ん、筋金入り。
読み始めは、どうにも下品で後味悪そうで途中で読むのやめちゃおうかと思ったんだけど、いやいや後半どんどんおもしろくなりましたよ。
黄泉の国もユニークだったし、ラストめでたしめでたしなのがいいですね。
¥2,000+税 早川書房 2009/3/25発行
ISBN978-4-15-209011-9
落ちぶれたギリシャの神々が、今はロンドンに住んでいる。
力は衰え、薄汚れた家で、しかしあいかわらず一族仲悪く好き勝手に生きている。
アプロディテはテレフォンセックスのアルバイトに明け暮れ、アルテミスはジョギングがてらの犬の散歩代行で小銭を稼ぐ。アポロンは霊能力者としてテレビに出ようとし、エロスは人間の信仰を集めるキリストに自分もハマり、ヘルメスはバイクで死者を黄泉の世界の入口へ運ぶのに忙しい。
ある日、アポロンはアプロディテを怒らせて、その報いとしてエロスに矢を射られて人間の女性に恋をする。相手の女性アリスは、ニールという恋人がいるが、二人とも超オクテでいまだに手を握ったこともない。
アリスを手に入れようとするアポロンの暴走で、地球存続の危機にまで発展し…。
アプロディテの品のないことと言ったら、さすがイギリスだわ。
アポロンの自己中心的思考もおみごとで、そのほかの神々のアタマ悪いところもいかにもギリシャ神。
いやーみょうちくりんな小説だ。
> 「これじゃ無理よ。使い物になるわけがない。よく見てごらんなさいな。こんなに痩せっぽちで、ネズミみたいな顔をしていて、背だってずいぶんと低いわ」(240頁)
アリスを救い出すための勇者としてニールがふさわしいかどうかを、ニール本人の前でこんなこと言うアルテミス。さすが神様、人間相手に遠慮なんてありません。このあともネズミみたいな顔、齧歯目みたいな顔、と連発。絵にならない男、ニール。オタクです。
> 「おれはただ、あんたから赦しを得られればと思ったんだ。そうすれば楽になれるとエロスが言ったから。おれがあやまったら、あんたは赦す。そういう取り決めになっているもんだと思ってたんだ」アポロンは口ごもるように言った。
「そんな取り決めなどあるもんか!」
アポロンはすくみあがった。威風堂々の猛者たる肉体をちぢこめて、校長を前にした気弱な男子生徒みたいに鼻を鳴らしていた。
「君は、本当に悪いことをしたと思ってるわけじゃない。罪の意識から逃れたいだけなんだ」
「それじゃいけないのか?」
「当然だ。謝罪というのは、自分が間違いを犯したことを認め、そのあやまちを悔いたときにするものだ。その償いをするためのものだ。自分が楽になりたいというだけの理由で誰かにあやまったって、なんの意味もない。謝罪というのは、自分ではなく、相手の苦しみを取り除くためにするものだからだ」
「どうしてこのおれが、あんたのためになにかをしなきゃならないんだ?」アポロンはおもむろに背筋を伸ばした。「あんたがどれだけ苦しもうが、おれの知ったこっちゃない」(287頁)
う~~ん、筋金入り。
読み始めは、どうにも下品で後味悪そうで途中で読むのやめちゃおうかと思ったんだけど、いやいや後半どんどんおもしろくなりましたよ。
黄泉の国もユニークだったし、ラストめでたしめでたしなのがいいですね。