今日の朝日新聞朝刊の記事(3面)から
復興に向けて、被災者の権利はどこまでか、大きな論点が2つ紹介されています。
1つ目は、憲法が保障する国民の権利と「公共の福祉」をどこでバランスさせるのか、ということ。憲法22条では居住の自由を認めていますが、この震災で被災があった地域に住宅を建設しないなど、「復興構想会議」でも高台移転案も議論されています。国全体の防災方針と、生まれ育った場所に住みたい等の個人の想いのせめぎ合いがあると考えられます。いずれにしても十分な議論かつ早急な解決が求められますね。
2つ目は被災者の生活再建支援の正当性やその範囲について、です。
税支出する立場にあった元財政課職員としては、こちらも今後の大きな課題だと思っているのですが。
そのまえに、まず「災害救助法」と「被災者生活再建支援法」について確認しておくと、災害救助法では救助できる範囲は基本的に緊急のもの、永続的ではないもの、例えば応急仮設住宅、最低限必要な飲料水や食品、身の回りのものなど、簡単に言うと個人の財産として残らないものが主な対象になるのですね。
一方、被災者生活再建支援法は、私有財産にもその支援の範囲が広がっているという点で、大きく両者の考えが異なっています。
被災者生活再建支援法では、住宅再建に最大300万円(全壊100万円の基礎支援金と、住宅再建として建設・購入200万円上限の加算支援金)が支給されますが、現行制度は、2007年に法改正によって対応できるようになったそうで、それまで『政府は従来、がれきの撤去費などは援助するが、個人財産の住宅に公費を投入することに反対だった』(記事から引用)ということです。
これは、2000年10月に発生した『鳥取県西部地震』の際、当時知事だった片山総務相が生存権を根拠に住宅再建支援金制度創設に踏み切ったのがきっかけだそうで、『憲法は住居の確保を政府や自治体に期待している』と主張され、財産権からも正当性が説明できるとも記事で紹介されています。
では、それ以前はどのくらい支援金があったのか、ちょっと調べてみました。内閣府防災情報のページに支援金の支給状況が掲載されています。
http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/sienkin-sikyujoukyou.pdf
平成11年(1999)9月の台風18号では、熊本県全域適用の災害となり、106世帯、80,375千円で1世帯当たり約75万8千円。平成12年(2000)鳥取県西部地震では、やはり県全域適用の災害となり、366世帯、280,971千円で1世帯当たり約76万8千円。
それが平成19年(2007)新潟県中越沖地震では3,033世帯、6,623,639千円で、ようやく1世帯当たり約218万4千円になりました。
法改正されてからは1世帯当たり200万円を超える支援金が支給されてきましたが、それでも家を建てようとしたらまだまだ足りないのが本音でしょう。
ただし、地震保険(以前、このブログで取り上げました)に加入していれば足りるのかもしれませんが・・・。
いつ起こるかわからない危機に対して、どこまで備え、税支出の範囲はどこまでなのか、とても悩ましく難しい問題です。
今世間をにぎわしている某焼肉店の0-111問題で男児が死亡してしまった件も、どこまで危機感を持って消毒や衛生管理をしていたのかは、今後の捜査によって明らかになるのでしょうが、営業利益を上げるためにカットした経費と、いつ起こるかわからない事故予防にかける費用との分岐点を誤ったのでしょうか。
政府や各党でも、今後も発生が予想される大規模災害に備えるための財源が議論されていますが、どの程度の危険に備えどの程度のたくわえが必要なのか、埋蔵金といわれるほど無駄にプールする必要はないまでも、みんなが納得できる適量のバランスを過去の歴史に学び、今後に活かしてほしいです。