恐怖日和 ~ホラー小説書いてます~

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山路譚【きょうも山道を走るのだ・1】

2019-03-10 15:28:15 | 山路譚


 山道をよくドライブする。
 なんの目的もない。ただ走りに行くだけだ。
 人に話せばたいがいは首を傾げられる。だが、そういうドライブが好きなのだから仕方ない。わかってくれる人はわかってくれる。
 数年前、深い山中で〇〇不動と書かれた矢印の看板を見た。
 地図で調べたがこの辺りに神社仏閣はない。道祖神のようなものかと興味を引かれ、矢印のほうへとハンドルを切った。
 だが、すぐ後悔に変わる。最初アスファルトだった道はすぐ小石だらけの地道に変わり、狭い幅員はますます狭くなっていった。
 日も暮れ始め、方向転換する場所もなく、こうなったら絶対見てやるという意地も出て、そのまま進んだ。
 ヘッドライトに浮かんだ次の矢印は熊笹の繁る下り斜面を指していた。当然車は入れない。
 車を降りて覗き込んでみたが、暗さもあって素人が進むには難しい道なき道だと思った。
 あきらめた時、ふっふっふっと荒い息遣いが聞こえた。
 目の前の熊笹が揺れるも何もいない。
 ぞっとして慌てて車に乗り込み、バックでその場を離れた。
 少し広い場所で切り返しを繰り返し、何とか方向転換して山道を抜ける。
 本道に出たものの、あれからずっと後ろが気になって仕方ない。ただの恐怖心だと思うが何もないのに何度もドアミラーを確認してしまう。
 自販機の明かりが見え、ようやく気持ちも落ち着いてきた。
 コーヒーでも飲もうと車を止めてドアを開ける。
 頭上から、ふっふっふっと荒い息の音が降って来た。
 どこをどう帰って来たのか、気付けばベッドの中にいて震えていた。
 その後は何も起こらなかったが、あの息遣いが今でも聞こえてきそうで、常にテレビやオーディオの音量を上げている。



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2 コメント

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Unknown (raburin_2007)
2019-07-12 11:21:31
ホラー好きなのでゆっくり読ませていただきます🎵
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raburin_2007様 (Unknown)
2019-07-12 13:47:25
ありがとうございます。
上手くも怖くもなくて恐縮ですが、嬉しいです。
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