
それはまさに「心配して損した」案件である。
年末のちょっとした話題として、一部の天文ファンを震え上がらせた小惑星「2024 YR4」。観測史上最も地球衝突の危険が高いとされ、SNS上では「人類の終わりが近い」「これで仕事を辞められる」など、ある意味で希望に満ちた投稿が飛び交った。ところが、NASAとESAが24日、「計算し直したら、2032年の衝突確率はほぼゼロになった」と発表。つまり、皆が心のどこかで期待していた“宇宙規模のドラマ”は、ただの計算精度による誤解だったというわけだ。
これは、夏休みの宿題を終わらせずに「明日地球が滅びるかもしれないからやらなくていい」と豪語していた小学生が、急に「やっぱり普通に学校あります」と言われるようなもの。あれほど期待させておいて、何事もなかったように終わるのが宇宙の常である。
だが、ここで一つ思い出してほしいのは、「ほぼゼロ」という表現である。「ゼロ」ではない。もしかしたら、NASAの研究員が計算を間違えた可能性もあるし、2032年の直前になって「やっぱり衝突コースでした!」なんて手のひら返しをされる可能性だってある。もはや「世界の終わり」は、どこかの研究室の計算精度に左右される時代なのだ。
結局のところ、「危機」は訪れず、我々はこれからも変わらぬ日常を生き続けることになった。つまり、明日も普通に仕事があるし、宿題もちゃんとやらなければならない。そしてこの先も、似たような小惑星が発見されるたびに、ちょっとした騒ぎが起こり、「やっぱり大丈夫でした」という発表が繰り返されるのだろう。
それにしても、こういう話題が出るたびに人々が妙にワクワクするのは、日常にちょっとしたスリルを求めているからかもしれない。もし本当に地球が滅ぶとしたら、人類は最後の日をどう過ごすのか――そんなSFじみたことを考えながら、結局今夜も普通に風呂に入り、歯を磨き、明日の予定を確認するのだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます