許してください（１）

話は２年前にさかのぼる。

当時のメインバイクはヤマハTDM850。
バイク史的には現行タイガーの祖先とも言える、足長のスポーツツアラーだ。

このTDMは本当に良くできたバイクで、殊に大好きなツーリングでは無類の快適さと楽しさを誇っていた。
当然ながらこれといった不満もなかったのだけど、なんというか、もっと軽やかなバイクが欲しくなっていた。

ツーリングで楽しい、とか、長距離で楽ちん、とかいう但し書きナシの、いわゆる「ロードスポーツ」が欲しくなっていたのだ。

そこで、当時話題だったKTMのストリートファイター・990 SUPERDUKEの試乗をしにショップへ出かけた。

SUPERDUKEは超アグレッシブな、それは楽しいバイクだったんだけれど、そのスタイルも負けずにアグレッシブであり、特にテールカウルから「にゅっ」とばかりに顔を出したツインサイレンサーは、後部座席の住人にヤケドの恐怖をいだかせるのに十分なものだった。

SUPERDUKEは、わが家の「条件」を満たすにはこの点で失格となったわけだ。

一方、同日試乗した旧LC4エンジン搭載の640 ADVENTUREの印象は予想以上によかった。タンデムでも「なんとかなる」レベルの居住性を確認。コイツとエンジンとフレームを共有するというだけの根拠で、実車を見てもいない640 DUKE2（当時既にカタログ落ちしていて、日本法人が在庫を抱えていたらしい）を大幅値引きで契約したのだった。

果たして、納車されたDUKE2は、実にめくるめくバイクだった。
ドカン！　ビュオン！　ガツン！
……と、まぁそんな感じ（爆）
経験豊富なライダーの言を借りれば「市販車でありながらチューンドシングルのような」と形容されるこのエンジンは、玄翁で材木をガンガンぶっ叩きながら走る──そんな感覚で、乗り手もとにかくアドレナリンが出まくるのを止められない。

半面、いつでも攻撃的になる自分を抑えるのが難しいバイクでもあって、自分の車歴の中で言えば、ホンダCRM250Rのようなフルサイズ２ストトレールを二乗したような印象を受けたのだった。

とまぁこんな具合のバイクだから、楽しくないわけがないんだけど、肉体的にも精神的にも、そういう状態に自分を置ける時間が今の生活には限られているという現実がある。

零細家内制手工業のわが家では、自分のオフとカミさんのオフは限りなく同一なワケで、互いに苦労してることが分かってるだけに、できれば一緒に楽しみたいと思わずにはいられないのだ。ラブラブとかそういう話を超えて、これはもう戦友気分。ワインディングも一緒に攻略だ～！……みたいな（爆）

（※一応カミさんの名誉のために書いておくと、わが家では別に１人で走りに行くことが禁止されてるわけじゃないのだ。そういう楽しみを前提にしたバイクとして、オフ用のXLR、若返りの霊薬GPZもある。だけど実際にはお互いヒーコラ言って働いてる関係上、そういう気分になれないことがままある……と、まぁそういうこと）

となると、DUKE2の車格はガタイのデカイ我々２人が「乗る」ことはできても、乗って走りを楽しむには、いかにも小さすぎた。

この間、メインバイクはTDMからタイガーへと変わり、より万能性を増したこともあって、DUKE2はますます出撃の機会を失いつつあった。しかしタイガーが、DUKE2に求めたような「すぐ乗り出せる感」を満たしているかというと、それもまた違うんである。帯にもたすきにもなるタイガーだが、ガンベルトにはならない。そんな質的な違い（意味不明）。

……そんなこんなで悶々としていたある日、修理入庫していたDUKEの引き取りがてら訪れたディーラーで、ついつい試乗しちゃったんである。アイツに。（つづく）

↓アイツ(^^;)