親父が歩いた。自分の足で。
もう何カ月ぶりのことだろう。
ほんのわずかな距離だけれど。そして歩行器の助けを借りてのことだけれど。
だから今夜は、祝杯をあげた。
日本酒を、と決めていたのに、残っていた会津錦は一升瓶の底にほんのわずか。
そこで以前、親父にもらったウヰスキーを開けることにした。
まるで格安の、質より量の焼酎みたいなシンプルさの大瓶に貼られたラベルには「BV」の文字。
黒い天鵞絨という名を持つそのウヰスキーは、カナダで醸されたもの。寡聞にして、カナディアン・ウヰスキーというジャンルは耳にしたことがなかった。
キャップの紙封には「1968」の文字。
自分より少しだけ年若いその酒は、予想に反して深い余韻と、けれど清々しい香りを併せ持った美味い酒だった。
自分が初めて歩いたときも、親父はこんな風に喜んでくれたんだろうか。
ふと、そんな思いが胸を過ぎった。
| Trackback ( 0 )
|
勝利の美酒ですね。
どうもありがとうございますm(__)m
>ばばばさん
久方振りです。大変な毎日と思いますがお元気でしょうか。
小さな勝利でしたが、親父にとってはすごく大きな勝利だったと思います。
さすがばばばさん、カナダの酒にも通じてらっしゃる。
この酒は、確かにいい香りがしました。今後はカナダのウヰスキーも飲んでみたいなと思わされました。
当方、昨年の変則夏休み(11月)には
義父を整形外科に入院させたのですが、
今年の夏休み(今度は7月)もまた、
義父の入院ネタに費やすことになりました。
今度は脳梗塞からの退院。
幸い、順調な回復ですので、
私の方もうれしい話にする予定です。