辻村さんの本は2冊目かな。
ストーリー
『かがみの孤城』『傲慢と善良』の著者が描く、
瑞々しい子どもたちの日々。そして、痛みと成長。
かつて、カルトだと批判を浴びた<ミライの学校>の敷地跡から、
少女の白骨遺体が見つかった。
ニュースを知った弁護士の法子は、胸騒ぎを覚える。
埋められていたのは、ミカちゃんではないかーー。
小学生時代に参加した<ミライの学校>の夏合宿で出会ったふたり。
法子が最後に参加した夏、ミカは合宿に姿を見せなかった。
30年前の記憶の扉が開くとき、幼い日の友情と罪があふれ出す。
文庫で600pを超える長編。
個人的には『かがみの孤城』よりも好きな作品。
いわゆるカルト団体<ミライの学校>の内部で、大人の理想のために親元を離れて暮らす子供たちの境遇とその後の人生について、リアルに生々しく目の前の問題として感じられる。
この作品に出てくるメインの登場人物は<ミライの学校>をカルト団体とは思っていないし呼んでいない(外部の人がそう呼んでいる描写では出てくるけど)。弁護士で、かつて合宿に参加したことのあるノリコも、カルトと言われることに違和感を抱いている。記憶の中の<ミライの学校>はそんなにおかしなところだったのだろうか…
それにしても、辻村さんて子供の行動や心理描写がうまい作家さんだなと思う。自分の小学生時代を思い出したら、今は疎遠となった当時の友人やクラスメートの顔が思い浮かんできた。そして彼女たちと、ミカやそのほかの<ミライの学校>の中で暮らす子供たちとを重ね合わせてしまい、ギュッと胸が痛くなるような瞬間が何度かあった。あの子たちは今どんな風に暮らしているのだろうか?ノリコのように、あの時は友達と言っていながら、今の今まで彼女たちのことをすっかり忘れていたのではなかったか?
ミカの気持ちを考えるととても切ないし辛い。両親と暮らしたくても、両親の理想のため、そして環境がそれを許してくれなかったし、<ミライの学校>を出た麓では、本当に仲の良い友人に恵まれているわけではなかった。無理やり目を向けさせられた現実にショックを受け、信じていた大人たちから裏切られたような気持になっても、結局はその中で生きることしかできなかった。彼女が自分の子供たちに付けた名前にいろんな思いが込められていて、余計に辛かった。
事件がきっかけで30年ぶりに出会うノリコとミカ。今では自分たちの家族を持っていて、その形はそれぞれだけど、再び出会うことによって、お互いに子供との関係の中に未来がちゃんと思い描けていると良いなぁと思う。
辻村さんの作品は今後も機会があれば読んでみたいな。