タイトルから想像して何となく予想はしていたけど…
ストーリー
閉塞的な村から逃げだし、身寄りのない街で一人小説を書き続ける三島天は、ある日中学時代の友人のミナから連絡をもらう。中学の頃に書いた、大人になったお互いに向けての「手紙」を見つけたから、30才になった今開封しようというのだ――。他人との間で揺れる心と、誰しもの人生に宿るきらめきを描く、感動の成長物語。
閉塞的な村から出たくて仕方ない天と、誰からも好かれていて東京から引っ越してきたミナ、外見が整っている藤生と、3人の幼馴染を中心としたストーリー。30歳になった今はバラバラに暮らしているが、タイムカプセル的にお互いに向けて書いた手紙を開封するため集まることに。
それぞれ自分に無いものを相手が持っていることに羨ましさを感じている。「どうしてわたしはあの子じゃないの」と。
この気持ち、すごく良くわかるんだよな。子供の頃は本当にコンプレックスの塊みたいな人間で、思春期ともなればとにかく自分と他人とを比べてばかり。今では「わたしはわたし」と考えられるようになったけど、それは本当にだいぶ大人になってからだったものね。年代が上がるとともに羨ましく思うポイントも変わっていくもんだから、ずっと悩んじゃって。
結局は自分は自分にしかなれないし、それはどこにいても同じ。もがき苦しんだところで、自分を偽っていても苦しいし、ダメな部分も含めてこれが自分なんだと認めてあげる。大人になって自分の世界を広げてみると、何だか自分の悩みなんてちっぽけな気がしてきたり、他の人もそれぞれ悩みを抱えていることも分かったりして。
いつもは優しく背中を押してくれるような作品が多いのだけど、今回は田舎の閉塞感とか中学生くらいの気持ちの描写がリアルで、ちょっと苦しい頃を思い出してしまった。でも過去を振り返ることで自分の成長も感じられたな(笑)あの頃の自分も真面目に悩んでいたのだから無かったことにはしたくないし、そこから今の自分に至るまでの過程が大事だったのかもしれない。
そんな気付きを与えてくれるような本だった。