この春に切迫早産で1ヶ月以上入院し、予定日より3ヶ月早く約600gの双子を出産したばかり。
入院中の我が子へ冷凍母乳を届けるため、それを詰める母乳バッグの一番安い商品を探していた。
「我が子は1700gで産まれました。母乳を届ける際に、とてもお世話になりました。頑張っているパパママに届きますように。」
私のことだ、と思った。
双子の子育ては、想像以上にお金が掛かる。
入院費で財布は空っぽ、Sサイズよりも小さいサイズは割高で、しかも双子は二倍必要になる。
どうかき集めてもベビー用品を買うお金が足りないということが分かった。さあ困った。どうやってお金を工面すればいいのだろう。
「先輩ママを見つけて、お下がりをもらえないか頼むしかないよ。」
夫婦の相談がまとまったところへ、ちょうど低出生体重児をもつ親御さんがいたではないか。
「ご相談があります。他にベビー用品で使わなくなった物などございますでしょうか。もし出品していただければ、まとめて落札し、我が家で大切に使わせていただきたいと思っております。」
気の毒そうに思ってくださったのは、出品者の奥様だった。
「お気持ち分かります。何か他にもあげられるものはないか探してみたところ、数年前に購入した抱っこ紐があるようです。洋服は、もしご迷惑でなければ同封させてください。」
出品者であるご主人が、商品名を「売却済み」とした上で、返事をくださった。
「写真をアップしますので、少しお待ちください。あ、母乳バッグは急ぎますよね。明日は1日仕事でご連絡できなくてすいません。」
肌着や前掛けなど、性別を選ばないものを選んでくださり、何度かやりとりをした後、無事に落札した。
しばらくして母乳バッグが届いたとき、私たち夫婦は、ほとんど泣き出しそうになった。
両手で抱えるほどのダンボール箱が届いたからだ。中には、母乳バッグの他にも抱っこ紐、真新しいガーゼタオル、ベビー服や肌着が20着近く入っていた。私たちに心から同情し、助けてあげようとありったけの善意で送ってくださった。
「なんだか、申し訳ない。」
「うん、こんなにたくさんもらっちゃったら、オークションの売り上げ金が送料で帳消しになっちゃうもんねえ。」
心の中に、じんわりと温かいものが広がった。
今のオークションは、個人情報が相手に分からないよう匿名で配送され、名前も住所も分からない。分かるのは熊本県から届いたということだけ。このままでは気がすまない。改めてお礼を言いたい。商品が届いた連絡をすると、質問欄にこんなメッセージが届いた。「少し私事を話させてください。」
読むと、お子さんが生まれたとき、危険な状態で別の病院に搬送されたこと、当時はコロナの最盛期で面会ができず、壁越しに面会していた様子が綴られていた。
「妻は産まれた子に会うことも出来ませんでした。そんな妻と子を繋いだのが、この母乳バッグでした。私は、壁越しに妻から母乳バッグを受け取り、息子の病院に毎日運びました。通常、父親は授乳に参加できませんが、母乳バッグを通して少しでも参加できたことが私はとても嬉しく感じていました。」
さらに、こう締めくくられた。
「今回、この母乳バッグが貴方様との縁も繋いでくれたこと、とても嬉しく思っています。色々な方のおかげで、いま息子は元気に生きております。貴方様のお子さん達も、ご両親の愛情を一身に受けて、すくすく大きく成長することを心より願っております。」
あの出品者とのやりとりで家族のぬくもりを感じ、いつか私たち夫婦も、育児に悩むパパママの力になりたいと思う。
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