仮題 ゴルフ場に犬を連れて行く

日常の取るに足りないこととか、、過去に某機関紙に投稿したエッセイを中心に掲載しています~~~◎

02 夏はやっぱり

2021-11-08 | エッセイ

 「夏はやっぱりビールですね!」といいたいところだけど困ったことに下戸を自認するワタクシでして。 それでも人並みに夏にはシュワッ!としたくてスーパーで六缶パックを仕入れるのだが喉越しの清涼感を体感するのは最初のひと口だけ。後は惰性でまあ調子に乗って一缶飲んでしまう。しかし、その後がいけない。飲んだ量の二倍排出する気がするし、飲む前の二倍体が熱くなり後悔する事になるのだ。

 もっと困るのは真夜中に目が覚めることである。先日もいつの間にか寝入ってしまい意識が戻ったのは午前二時だった。普段なら寝直せるのだがこの日は完全に眼が覚めてしまった。そこで思いついた。タイトルに惹かれてきままに撮りためていた映画の中から一本の洋画をみることにしたのだ。これが久々のヒットでして。翌日から同じ監督の作品を七本、一気に見ることになる。

ムフフ・・・なんの映画かって? それは聞いてくれれば教えます。

(2018-08 機関紙に掲載)

(映画とはジム・ジャー・ムッシュの ストレンジャーザンパラダイズです。聞いてくれた人はいませんでした)


01 1977年のストレンジャー

2021-11-08 | エッセイ

1977年のストレンジャー

三菱のユニホルダーという軸がエビ茶色の2mmの太芯の製図用ペンシルがある。これがなければスケッチも現場でベニアに指示も書く気になれない。しかし行先でよく無くす。ジャケットのポケットからバッグの隅々まで探しまくる。絶望の果てにある時、1本無くしたら2本買い足すことに決めた。

この製図用ペンシルとの付き合いは長い。1977年 大学の建築学科の1年の製図室からだ。学生たちは初めて売店で買ったドイツのステッドラー社製のブルー軸のホルダーを握り、まず線の引き方、定規の使い方を習った。一定の太さと濃さを保った端正な直線・・初心者にはとても難しかった。コツは軸を回しながら線を引くと芯先が常に研がれシャープな線が引けるとの事。隣席の工業高校出はいきなり素晴らしい線を引いてみせた。製図の達人ともなると小まめに芯研器で研がなくともかなりの量のシャープな線を引けるとのことだった。

製図室は真っ白いケント紙に黒い線が走るサラサラ音と芯研器のガリガリ音が鳴り響いていたが至って自由な雰囲気だった。そして誰かが持ってきたカセットテープがBGMで流れていた。始まりいつも「ビリージョエルのストレンジャー」だった。いつのまにか曲順も覚えやがてLPレコードを手に入れた。

まもなくホルダーは握りやすく控え目なエビ茶色のプロユーザーっぽいデザインの三菱ユニホルダーを手に入れた。その後、微妙な改良を重ねた完璧なユニホルダーはいつの時代も僕のデスクで散歩を待つ愛犬のように側にいる。

すでに設計実務がCADに代わってから製図用具の需要は落ち、ほとんど街の文房具店には見かけなくなったがまれに売れ残りを見つけることがある。その瞬間、1977年の製図室にトリップする。いつでもビリージョエルがストレンジャーを歌っている。 

(2021-04 機関紙に掲載)