双子の見分け方
八年くらい前にマンションの隣室に越してきた双子の男子が今年、高校に入学した。小中同じ学校に通っていたがこの春から兄は西へ10分の高校、弟は北へ15分の高校に進学した。
二人は全く同じ顔をしていたが兄の口元にホクロがあることで見分けることが出来た。そして言葉を交わしてくれる愛想がいい方が兄だった。中学に入って同じバスケットボールに入って一緒に行動していたがどちらかがメガネをかけ始めてどちらかが洋服に凝り始めた。自転車は赤と黒だったが成長して昨年から白と黒に変わった。丁寧に駐輪しているほうが多分兄だった。
ところが去年からコロナ禍になってマスクを着用し始めると全く見分けがつかなくなった。別々に訪ねてくる同級生を見て兄か弟か見分けるようになったが春先になって「高校合格しました!」と報告してくれたのは弟の方だった。これからは紺のブレザーだがネクタイやエンブレムデザインで見分けられる、グレーのスラックスの方が・・あれ、どっちだっけ?と思っているとまもなく通学用自転車に高校の登録シールが貼られた。黒い自転車が兄である。
(というエッセイを書いたのは5月の事でそれから半年、隣室の4人家族と愛犬一頭、時を同じく4階の5人家族も近所に越していった。その2家族に共通しているのは父親が同居していないことだったが・・・自転車置場から多分、合計8台の自転車が消え、元気に通学して行く子供たちも消えた。やれやれ・・・)
(2021-11 機関紙に掲載)