仮題 ゴルフ場に犬を連れて行く

日常の取るに足りないこととか、、過去に某機関紙に投稿したエッセイを中心に掲載しています~~~◎

09 双子の見分け方

2021-11-09 | エッセイ

双子の見分け方

 八年くらい前にマンションの隣室に越してきた双子の男子が今年、高校に入学した。小中同じ学校に通っていたがこの春から兄は西へ10分の高校、弟は北へ15分の高校に進学した。

二人は全く同じ顔をしていたが兄の口元にホクロがあることで見分けることが出来た。そして言葉を交わしてくれる愛想がいい方が兄だった。中学に入って同じバスケットボールに入って一緒に行動していたがどちらかがメガネをかけ始めてどちらかが洋服に凝り始めた。自転車は赤と黒だったが成長して昨年から白と黒に変わった。丁寧に駐輪しているほうが多分兄だった。

 ところが去年からコロナ禍になってマスクを着用し始めると全く見分けがつかなくなった。別々に訪ねてくる同級生を見て兄か弟か見分けるようになったが春先になって「高校合格しました!」と報告してくれたのは弟の方だった。これからは紺のブレザーだがネクタイやエンブレムデザインで見分けられる、グレーのスラックスの方が・・あれ、どっちだっけ?と思っているとまもなく通学用自転車に高校の登録シールが貼られた。黒い自転車が兄である。

(というエッセイを書いたのは5月の事でそれから半年、隣室の4人家族と愛犬一頭、時を同じく4階の5人家族も近所に越していった。その2家族に共通しているのは父親が同居していないことだったが・・・自転車置場から多分、合計8台の自転車が消え、元気に通学して行く子供たちも消えた。やれやれ・・・)

(2021-11 機関紙に掲載)


08 丸太のスツール

2021-11-09 | エッセイ

丸太のスツール

 昨年、あるビルの改修工事に立ち合ったらテナントの残置物に立派な丸太の切り株が八本ほどあったので二本分けてもらった。これから撤去処分される運命のもの。気の利いた業者ならリサイクルショップに持ち込むとかあるのだろうけど。 丸太は直径約三十三センチ長さ六十センチほどでハイスツールかサイドテーブルとして使用していたらしい。

この丸太、調べたら「青森ヒバ」らしい。樹齢は百年以上かなあ。この頃、化粧材は突板、集成材から木目調という印刷へと変身を遂げた。高価であると言われるために無垢材や丸太の使用は珍しくなった。そして家具は、軽くて移動が楽で折り畳めるものや、安価で配送が楽な組み立て式が主流になった。森には充分、木は繁っていて別に不足しているわけではない。

  さて、一本は自分の寝室のサイドテーブルにした。こっちは木目が曲がっていて元が幾分広がっている。風雪に耐えてきたのだろうその歴史あるワイルド感もいいが背割り側を室内に向けて置いた。年輪を横切るスリットが形を引き締めいい感じになった。生涯日陰で育った側がこれから日の目を浴びるとき。そして木の香りも時折うっすらと漂う。

  そしてもう一本は心あるインテリア好きの友人に使ってもらうよう送り出した。まもなくリビングサイドで圧倒的な存在感を持って鎮座している写真が送られてきた。ずっと前からそこに居たみたいに馴染んでいた。

(2021-01 機関紙に掲載)