昔から知っている水道職人さんのこと
二十代の後半に風呂付の部屋に引越をした。マンションは設備業者さんがオーナーで1階にはその工事会社が入居していて、そこには確か3歳年上のTさんという職人さんがいた。
僕は独立したばかりで何かとTさんには排水管の納まりなど教えてもらったりしていたが何故か取り止めのないバカな話も気が合った。 それから15年程たって設備工事店は閉業し今は懇意にしているリフォーム工事店の社員として在籍していたので現場で見かけるとよく立ち話をしていた。(正確にいうとTさんの転職先が工事トラブルを抱え建築士を探していた時に彼が僕に相談してきて以来である) お互いに年も取った。この数年は愛犬と健康の話が中心でいつもタバコや酒の量、血圧は高いが薬も服用せず病院は怖くて行ってないという感じだった。 風貌はいつも髪型はきれいに刈上げブリーチで抜いた金髪にゴールドのネックレレスで60代半ばとしては若く小奇麗だったが今年になって久しぶりにお会いしたら、髪型は相変わらずだがやせ細って腰が曲がりその上下のアンバランスさといったら滑稽で思わずツッコミ入れてしまったのだった。
今年はなぜか洗面器の据付直しなどでお会いする機会が多かった。8月末にはうちのマンションのウォシュレットの交換に来てくれたまでは良かったのだが深夜WCを使った翌朝、ロータンクの水が流れ続けていて蒼くなった。 原因はボールタップのチェーンの異常だった。 僕が調整しても何度か起きたので会社に修繕を依頼したのだがその後の工事連絡が無く直接Tさんとも連絡が取れなくなった。
その後、Tさんが9月半ばに現場で意識を失い救急搬送されて入院していることがわかった。 病名は「脳幹出血」とのこと。やはり慢性化した高血圧が主な原因らしい。コロナ禍の集中治療室で家族でさえ面会にも行けないらしく・・・その後開頭手術に至ったが意識は戻らず戻ったとしても半身麻痺が残るとか車椅子生活になるのは良い方でそのまま植物状態になることがほとんどらしいとのこと。
・・・それから1か月半、いまだ病院で寝ている。Tさん、ふざけていないでそろそろ起きてください
(これは2022年の11月に機関紙に出稿の為に書いた。その後意識が戻ったとは聞いていない。写真の我ら青春は別に関係ありませんがなんとなく。) (追記 2023年7月8日にご逝去されたとのこと聞きました)
2023/03/17 機関紙に発表