泣き虫

　割りと涙もろい方である。小さい頃から涙もろい方だったのに、更に歳のせいで涙腺が弱くなったらしく、本当にちょっとしたことで涙を流すようになった。テレビを見て幼い女の子が殺されたなんて話を聞けば、もう可哀想で仕方がなくて泣いてしまうし、映画なんかもあっさりと感動の涙を流したりしてしまう。ついついジーンとしてしまって涙目になるくらいのことまでカウントすれば、ほとんど毎日のように泣いていると言っていいくらいである。

　とうの昔になくなった祖父からは、男が泣いていいのは親が死んだ時だけだとか、男の子は親が死んでも泣いちゃいけないとかよく聞かされていたものだが、こんな有様を見たらいったい何と言われることやらと思う。やはり明治男とは根性の座り方が違うのかもしれない。ただ、教育の成果が行き届いているのか、男が人前で泣くのは恥ずかしいという感情だけは強く刷り込まれているので、泣いているのを他人に気づかれたりすると非常に恥ずかしい思いをすることになる。だから、誰かと一緒にいる時に泣きそうになると、わざと大声で違う話をしてみたり、感動の場面をこきおろしたりして誤魔化すことになる。もともと偽悪趣味的な傾向が強い性格なので、なおさらである。それでも見つからないように一人でそっと涙を拭いたり、分からないように鼻をかんだりしているのだから、かなりの重症である。とりわけ困るのは職場の連中に見られることである。職場ではどちらかというと強面で知られているので、私が泣いたなんていうのは鬼の目にも涙とかからかわれる以前に「嘘でしょ。」という反応しか返ってこないのである。別に人間なんだからプライベートな場面で泣くことくらいあるじゃないかと思うのだが、そう言うと「いや、似合わないです。」なんて言われてしまう。まったく俺は一体何なんだと愚痴の一つもこぼしたくなってしまう。

　レッズがらみでも随分とたくさん泣いた。土橋のＶゴールが決まってＪ１への復帰がなった時、ミスターレッズ福田正博の引退発表記者会見を見た時、名古屋に負けて２ndステージ優勝を決めた時、そしてアルパイが浦和を去る際のコメントを見た時。ちょっと思い出しただけでも、すぐにこれくらいはあげられる。ただ、こうして振り返ってみると、延長Ⅴゴールを決めて勝ったのにＪ２に降格した時やナビスコカップで初めてのタイトルをとった時など、周りには泣いている人もいるような場面で泣いていなかったりもする。泣き虫なんだが、スイッチは適当に作動しているらしい。