再犯？

　いつものようにいつものドアから地下鉄に乗る。今日は一本遅れたので混んでいるなと思いながら、２～３人のお客さんが降りるのを見送ってから乗り込む。私の降りる駅は乗車するのと反対側のドアが開くから、電車に乗り込んだらそのまま奥まで進んでしまう。すると、急に女性が位置を変えて目の前に立ちふさがった。満員電車というのは一見無秩序に見えていて、それなりのルールというか行動パターンがあるのであるが、彼女の動きはいかにもそうした原理に反していて唐突な感じがする。てっとり早く言えば、なんでわざわざその場所に位置を変えたのかがよく分からなかったのである。別にそんなことはよくあることなので放っておけばいいのだが、なんとなく気になって彼女が元いた場所を見てみると・・。
　なんとそこには以前に遭遇という題で書いた、車内で触られたと女性が泣きながら訴えたおじさんがいるではないか。人の顔を覚えるのは苦手なのだが、あれだけの事件を目の前で見せられた上に、あの時と同じようなキャップをかぶっているのだから間違えようがない。驚きながらも頭の中はぐるぐると回り始める。あの日の事件は冤罪だったのだろうか。いやいや、示談が成立して起訴は見送られたのかもしれない。裁判になっていたとしてもいきなり実刑判決ということもないだろうし、そもそもまだ公判中なのかもしれない。それにしても、これほど図々しく同じ時間帯の同じ車両に乗ってくれるものだろうか。それに一番大切なのは、この女性に対しても同じようなことをしたのではないだろうかということである。そう考えてみれば、彼女の不自然な行動も納得がいく。ともあれ、正義の味方レッズレンジャー（そんなヒーローはいないとは思うが・・）としては見ず知らずとはいえ彼女を守ってあげなくては。
　というようなことを考えながら、わずか２～３駅ではあるが即席の中年ヒーローは不審なおじさんの監視に努めたのであった。その甲斐あってかどうか、その後おじさんは何らのアクションも起こさなかったのである。
　それにしても、何というか世の中複雑ですなあ。あの時の被害者女性の顔は覚えていないから何とも言えないけれど、あんな目にあったら女性の方は２度と同じ電車には乗れないくらいのダメージを負っていたとしても不思議はない。それなのにおじさんの方は平気で乗っている。もちろん、あれがただの冤罪だったのなら当然ではあるが、どうにも納得しづらいのである。

　またそのうち乗り合わせたりするのかなあ。うんざり・・・。