maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

節分の妄言 福は内-1

2015-02-03 18:17:43 | 支離滅裂-迷想迷夢-節分の妄言

節分の豆撒きも最近では様変わりでんなぁ!
昔は「煎り大豆」と決まったもんやったけど、最近は煎り大豆に味付けしたのは可愛い方で、袋入り、はては殻付きの南京豆まで撒くそうな。
やたら、清潔、抗菌と癇症病み(カンショヤミ)見たいに言うもんやから、マメを直に撒いたら汚のうて食べられんと言うんやそうです。
そんな事言うてるから、ばい菌まみれで育った戦中戦後世代と違て、実験用の無菌ネズミみたいになって、しょうも無いばい菌に手も無くやられるひ弱な人間が出来てしまうんでっせ。
撒く場所も家の出入り口、縁側から外に向かってパラパラッと撒いたもんですけど、マンションではそうもいかんでしょうなぁ。

「ちょっと、ちょっとアンタら何ですねん、ウチの勝手口にたむろして。
空き巣の団体かいな?見るからに怪しいなぁ。」
「アッ、お宅此処のご主人?お勤めご苦労さんです。ようお帰り」 「ようお帰り」「ようお帰り」・・。
「うるさいなぁ、出所祝いやあるまいし、近所迷惑やがな。早ようどっかへ行きなはれ。」
「行きたいのは山々なれど、今夜ばかりは三界に身の置き所がないのじゃわいなぁ。」
「怪体な声を出しなはんな、あれ?赤やら青のボディペイントしてるから判らんかったけど、ようよう見たら、この寒いのに裸や無いか!露出狂か?」
「いえ、そんな物やおまへん、ビックリされたらイカンから言いとう無いんですけど、実は鬼ですねん。」
「アホらしい、人を馬鹿にしたらアカンで、何処ぞに縞のトランクスはいた鬼が居てるもんか。鬼といえば虎の皮のフンドシ、手には鉄棒で筋肉隆々。あんたら手ぶらであばら骨隆々やんか。」
「虎の皮はワシントン条約で入手困難、長引く不況で鉄棒も手放して、残ったのは売るにも売れんこの角だけ」
「角て?どれどれ、ギャッ!オイオイ、ホンマもんの鬼かいな・・。その鬼が何でウチの裏口で寄り合いしてるねん?」

「寄り合いしてるわけや無いんですけど、何処も彼処も節分やいうて、豆を撒かれて追い出されましてん。昔は煎り大豆の小さいのやったから、『あ痛ッ』で済 んでたんですが、この頃は袋に入ったスマート爆弾見たいなんやら、悪逆非道にも南京豆まで撒かれたんでは、いくら鬼でも命にかかわります。お宅ばかりはど う言う理由か『福は内』だけで『鬼は外』が聞こえへんから、ご迷惑やろとは思うたけれど緊急避難」
「あぁ、それは別に深い理由は無いねん。ウチは先祖代々ケチやから、入ってくるのは好きやけど、出て行くのがいたって嫌い。ほんで『福は内』だけやねん」
「さよか、ほんなら静かにしてますよって、なんとか今晩だけここに居らしてもろても宜しいやろか?」
「おとなしいにしてたらエエようなもんやけれど、ご近所の皆さんが変に思うし、隣のマンションの娘さんらが気色悪がったらお気の毒や。よっしゃ中に入り、言うてもガレージまでやで。」

野良猫を見たら蹴り飛ばしたなるけれど、野良犬を見ると可哀想で辛抱たまらんというこのオッサン、どっちかといえば野良犬っぽい鬼をみてると可哀想な気がしてきた。
あろうことか鬼をガレージに入れたったんですなぁ。
「大将すんまへん」「旦那有難うございます」
「ガヤガヤ言いな、わかったから静かにしといて」

そこへ、「どなたかとご一緒?」とガレージを覗いたのは此処のカミさん。
さすがに変人のオッサンと長年連れ添って来ただけに、少々のことでは動じん。
「まぁ、仰山なお人!そんな所で押し合いへし合いしてなはらんと、どうぞお入り。」
「お入りて、此奴等鬼やで。」
「鬼みたいなもんに驚いててアンタと夫婦が勤まりますかいな。大人しそうな鬼やんか。さぁさぁ、鬼らしゅうもない遠慮してんとどうぞ。」
「あのぉ、出来ましたらそのメザシの頭を・・。」
「あら、御免、御免。へぇ~、これって効き目あるんやねぇ。皆さん裸足やねんね、雑巾はそこのん使うて、綺麗に足拭いてから上がってちょうだい。」

「奥さんお邪魔します」「お家(エ)はんすんまへん」「ご寮(リョン)さん上げてもらいます」
中々行儀のエエ鬼共で、口々に挨拶しもって台所に上がりこんできました。
「しゃぁ無いなぁ。今から晩飯やねん。あんた等カップ麺でも食べるか?」
「い~え、どうぞお構いなく。わたいらの食べ物は人間の欲とか憎しみですねん」
「そんなもん世間に何ぼでも有るやろうに、何でそないに痩せ細ってるねん?」
「実は有りすぎるのんも良し悪し、食べ過ぎで消化不良の胃下垂。そこへもって、この頃のは味がクドイし、賞味期限が遠に切れてるのに騙されて、傷んでるのが多うて、よう食中毒するんですわ。昔はもっと新鮮、単純でアッサリしてた。」
「何んか、判るような気がするなぁ・・。しかしこないに周りに集(タカ)られてたんでは飯が食いにくい。座敷にでも行っといてんか。アッ、となりの六疊に はバァさんが居てるから、びっくりささんようにソ~ッと行きや。ビックリしてお参りでもされたらこの景気が悪いのに物要りやよってな。」

鬼共がゾロゾロと薄暗い廊下に出た途端に、拍子の悪い事に便所帰りのバァさんと出ッ喰わしたんですなぁ。
人間九十年も生きてると関東大震災、室戸台風、南海地震、B29の大空襲、旦那の浮気、近くは阪神大震災と散々修羅場を潜ってるから鬼が出たぐらいではビクともせん。
「まぁ、お客さんかいな、丁度宵から寝て此れからは目がさえて眠れんところでしてん。息子等が食事している間お相手でも」
「お婆ちゃん、アンタ判ってるかいな、その連中は鬼でっせ」
「鬼に驚いててアンタの母親が勤まるかいな」
カミさんといい、母親といい、一体私は何やねん?
普段喋り相手に不自由してるから、此時とばかり喋る喋る。
鬼共も最初は気圧されて大人しかったけども、段々慣れて賑やかになってきた。
「オイ、座敷がえらい盛り上がってるで、お茶でも持って行って様子見といで。」
「お茶受けが何にも無いねんわ。」
「撒き残した炒り豆があるやろな?」
「鬼にマメ?厭がれへんやろか?」
「ほんなら、惜しいけどラッキー・チェリー豆でも出したり、あれなら良かろう。」

「旦さん、オバアちゃんお相手があってえらい喜んで弾けてはりますわ」
「今何してるねん、何やドスドスいうてるなぁ?」
「オバアちゃんが先生(センセ)で九条踊りの総踊り。それが済んだら新町踊り、堀江盆歌、何やったらカンカンノウも教える言うてはりきってまっせ」

「さぁ、後に付いて歌いなはれや、エエかいな?ア、ソレ”

かんかんのう きうれんす きゅうはきゅうれんす さんしょならえ さあいほう にいかんさんいんぴんたいやめあんろめんこんふほうてしいかんさんもえもんとわえぴいほう ぴいほう♪
黙って聴いてんと遠慮なしに一緒に歌いなはれ。」
「お師匠(ショ)さん、遠慮はしてまへんねんけど、そんなヤヤコシイ文句、急には付いて歌えまへんわ。一区切りずつ細切れにしてお願いしますわ。」
「若いのに情け無いねぇ、わたいらの子供時分には1~2回聴いただけで覚えて、おじゃみ(お手玉)しながら歌てましてんで。」

「あんな長い文句をようまぁ覚えてるもんやねぇ。オバアちゃんの記憶力大したもんや、全然衰えてへやんか!」
「昔の事は覚えてても、今晩食べたおかずを覚えてるかどうか怪しいで。」
「そういうけど、普段と表情が違うよ、10年くらい若返ったように見えるやんか。鬼さん効果やろかねぇ。」
「そら良かった、飯も食わんそうやし、部屋さえあったら彼奴等居いといてやってもええんやけど、人数が多いからなぁ。」
「『どん』が居らんようになって寂しなったし、見かけは厳ついけど気は優しそうやし、鬼やったら死ねへんやろしねぇ。」

たまたま、台所にお茶のお変わりを貰いに着てた鬼が小耳に挟んで、仲間の兄貴分にご注進。
やがて、「お呼び立てして真にすんまへんが、ちょっとお座敷までお運びを、」と下っ端の鬼が呼びに来た。
下座にかしこまって正座した鬼共が「お願いします、決してご迷惑はお掛けしません、幸いお宅は屋根裏も床下も広々してますので、私共の棲家は充分すぎるほ どございます。既にお住まいの貧乏神、疫病神さんも、ご主人さえ良ければと言うてくれて居ります。鬼助けやとお思いになって、どうぞ置いてやってくださ い。野良猫やネズミなんぞは蹴散らしてお目に掛けます。身命に変えましても小鳥さんとイタチさんを守ってやります。」

「なるほど鬼だけに、人助けや無うて鬼助けか!そやけど、何で私が小鳥さんとイタチを好きやと知ってるねん。」
「へぇ、そらもう鬼でっさかい。」

「何や判ったような判らんような、けど『鬼やから』と言われたら大概の事は納得してしまうなぁ。」
「お願いします」
「旦那お願い」「大将!」「親分!」
「ワタイからも」と母親にまで言われたんではしょうが無い。

「どないする?」とカミさんに訊くと、
「留守番になってエエかも知れんねぇ」といたって気楽な答え。
それはええけれど、貧乏神、疫病神が住み着いてるというのはイカンがな!
「お前等で貧乏神と疫病神を追い出せんか?」
「すんまへん、一応あちらは神と名が付いておりますので、格が違いまして・・。それに貧乏神、疫病神も精進して資格試験に受かったら福の神に抜擢、出世せんとも限りません」
「神さんにも昇格試験があるんかいな?あんた等はどないやねん?」
「残念ながら私等鬼は荒仕事担当の先手ですよって、一生下積み・・・。ク~・・・。」
「泣きな、泣きな、鬼の目にも涙というけど、鬼の泣顔というのんは見苦しいやないか。」

て~次第で、どっと扶養家族が増えまして、
しかしこの始末はどうしたもんやろ、昼休みが終わってしもたがな・・・。
時期もんやから明日には始末を付けんといかんしなぁ。
まぁ、書き出してから気が付くのは何時ものことや、何とかなるやろ。
ならんかったらゴメンネ、先に謝っとこ~っと♪

2004/02/03

節分の妄言 福は内-2 心ならずも続


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
久々キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! (きたきつね)
2021-02-02 21:22:14
HPがなくなってからというもの、師匠の読み物が読めなくて少々欲求不満。
ここへきてまた面白い話が。
続き期待してます!
返信する
Re:久々キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! (maido)
2021-02-03 07:55:56
>きたきつね さん
倉庫を探してみます。
返信する