彼女には憧れの人がいた
スラリと長身で
サラサラヘアーのジーパンの似合う彼
言葉を交わすでもない
そっと遠くから見つめている
それだけで良かった
恋は彼女を綺麗にする
憧れの彼が近くに居るだけで小さくなる彼女
鼓動が聞こえそうな程に純粋
彼が週末やってくる公園がある
彼はギタリストを夢見る無名のギタリスト
公園の端っこでギターを奏でる
彼も夢を追っている
次第に彼の奏でるギターの音に人だかりが
益々と彼女から遠い存在になってゆく
それでも良かった
彼を遠くから眺めていられる
それで良かった
幸せだった
雨の公園
彼女は公園のベンチで待っていた
今日はこないかもしれない
彼女は彼がギターを奏でる場所に座った
寂しいがお別れ
せめて最後に顔が見たかった
傘の尖った部分で文字を書いた
LOVE...φ( ̄▽ ̄*)ポッ
立ち上がり彼が居た場所の空を仰ぐ
雨と一緒に涙が頬を伝う
そっとその場所に傘を置いた
公園を出ようとした時だった
『君~っ』
大きな声で置いてきた傘を持って走ってくる
ドキドキドキドキ
クラクラクラクラ
今にも心臓が
目眩が回る
彼は真っ直ぐ走りより
目の前に立ち
『傘を忘れたよ』
彼女の恋は終わった
あれから20年も経った
もう1度あの公園に行ってみたいと彼女は思った
昔のまま公園はあった
懐かしい気持ちが蘇る
その時、懐かしいギターの音が
まさか・・・・
彼?
ギターを奏でて同じ場所に?
何で?
彼はギターを奏でるホームレスのオジサンになっていた