2011年8月13日(土)、沖縄県西原町立中央公民館で小出裕章さんの講演会「放射能と子どもたち」が行われた(ブログ「小出裕章非公式まとめ」)。主催は、西原町立図書館。7年前のこの日(8月13日)、沖縄国際大学に米軍のヘリが墜落。ブレードの傷を検知するために搭載していた放射性物質ストロンチウム90が飛散し、3.6マイクログラムが消失した。新館長の新川美千代さんは、小出さんが、この事故を調査されたときに知り合ったのがご縁で今回の講演を依頼された。また、新川さんは、今春、図書館長に就任するにあたっても小出さんに相談したところ、次のように励まされたという。
「大人に騙されない感性豊かな子どもたちを育ててください。それは図書館の使命でもあります」
新川さんは、小出さんの講演の前に、茨木のり子さんの「倚りかからず」という詩を朗読された。
「倚りかからず」 茨木のり子
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
(『倚りかからず』茨木のり子著、筑摩書房、1999年)
倚りかからず | |
筑摩書房 |
倚りかからず (ちくま文庫) | |
筑摩書房 |
これは、茨木さんの詩の中では「自分の感受性くらい」とならんで、私も大好きな一編で、9月から始まる連続講座「情報を評価し判断する力をいかに育むか」に寄せる私の思いにも重なるので、転載させていただいた。
なお、この日の小出さんの講演内容はYouTubeで公開されている。
・環境が放射能に汚染されてしまった現状を踏まえて、いかにして子どもたちを被曝から守り、第一次産業を守るかということが大切。
・そのためには、基準を決めて、それ以上であれば危険だから出荷停止、それ以下であれば安全なので流通させるという考え方は間違っている。放射能は微量でも危険で、安全な基準などないからだ。
・今やるべきことは、汚染を測定して表示すること。その上で、生産したものは、私たちがすべて引き受ける。影響を受けやすい子どもたちには、汚染度の高いものは食べさせないようにする。だが、第1次産業を守るためにも、大人は原発を許してきた責任に応じて覚悟をもって食べる。その判断は消費者に任されている。
・反原発の闘いと沖縄の闘いは同じ。強いものに従うのではなく、生きることが困難なものに目を向ける優しさをもつことが人間の価値を決める。
7年前のヘリ墜落事故についての小出さんたちの調査結果は、下記の本で報告されている。
『沖国大がアメリカに占領された日―8・13米軍ヘリ墜落事件から見えてきた沖縄/日本の縮』図(青土社、2005)
沖国大がアメリカに占領された日―8・13米軍ヘリ墜落事件から見えてきた沖縄/日本の縮図 | |
青土社 |
目 次
1. 8・13米軍ヘリ墜落事件―事件の意味と背景(大学が米軍に「占領」された七日間―検証ドキュメント
事件とその波紋
大学は何を蹂躙されたか
放射能汚染を検証する
基地の中の日常
基地依存経済の縮図
岐路に立つ沖縄/日本)
2. 「黒こげの壁」への想像力を問う―「記憶」の継承と発信(「記憶の場」を考える
可能性としての大学
二つの建物が語りたかった物語―ペルー館と琉球政府立法院
たじろがず見よ)
3. 付録
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