映画の話
1974年、アンソン(井坂俊哉)は病気の息子の治療のため、一家で京都から東京に移り住む。妹のキョンジャ(中村ゆり)は芸能プロダクションにスカウトされ、甥の治療費を稼ぐために芸能界入りを決意する。彼女は先輩俳優の野村(西島秀俊)と出会い、彼に恋心を抱く。
まずオープニングの電車内とホームでの大乱闘が井筒監督らしい。出端で観客の心を鷲掴みにし作品の中に力づくに引きずり込まれる。ただ、前置きも無く過剰なヴァイオレンスと言うのは強引かもしれない。前作では、ちゃんとキッカケがあってバス横転の大乱闘だったのだから、ちょっとしっくりこない。このシーンの喧嘩相手の日本人応援団は時代背景から考えると『花の応援団』へのオマージュ?
私は予備知識無しで見たせいか、アンソン一家が東京に引っ越してきた理由も、映画を見た後にネットの公式サイトを見て判ったし、主演の兄妹を演じる俳優が変わっていたので、前作とは別の人物の話だと思っていたのだけど、アンソンの家の仏壇に前作の楊原(現 松永)京子の写真が置いてあるのを見て初めて前作の兄妹のその後の話だと判ったしだいである、とにかく判りづらい映画だ。
時代も1974年に変わり、異常なほどにディティールにこだわっているのが画面からヒシヒシと感じる。町に張られている映画のポスターも多分井筒監督の趣味が反映されているらしく『パピヨン』『突破口』『悪魔のはらわた』『エマニュエル夫人』そして、極めつけはお正月に浅草の映画館で見るブルース・リーの『ドラゴンへの道』だ。劇場の前にはブルース・リーの腕がグルグル回る安っぽい立体看板まで作られている。映画を見た後はもちろん、なりきりブルース・リーで「アチョーッ!」と叫んでみたり、ヌンチャクまで振り回す徹底ぶりである。その他にも、ユリ・ゲラーのスプーン曲げや、「幸福ゆき」の切符のキーホルダーや、ブリタニカの百科事典、オールスター対抗水中運動会、「仮面ライダー アマゾン」や、ぶつかりそうになる『トラック野朗』みたいなデコトラや、ゲイラカイトなど、懐かしいアイテムが随所に映画に散りばめられている。
映画の感想
うーん、これは在日朝鮮人家族のサーガを描いた井筒監督版の「ゴッドファーザー」だな。井筒監督は口癖のように「僕は『ゴッドファーザー』が一番好きだ!」と言ってる監督である。前作を見ている時は、それほど感じなかったけど本作を見ると痛いほど感じ取れる。前作は日本人の目を通した在日朝鮮人との交流の話だったので取っ付きやすかったのだけど、本作は日本で暮らす在日朝鮮人の目を通した日本の話なので感情移入しづらい。
それから並行して描かれる1944年の南洋諸島の話が判りづらい。初め突然話がぶっ飛んだ時は何のことやらと思ってみていると、やがて話がアンソンとキョンジャの父の話と判って来るのだが、もう父は死んでいるのだから誰の見た回想かも不明であるのが難点である。普通、戦争の回想であるならば『プライベート・ライアン』や『父親たちの星条旗』の様に今現在生きている人の回想なら判るが、本作のように死んでしまっている人の回想シーンには無理がある、短いながら素晴らしい戦争シーンだっただけに残念に感じた。
それでもいい所も沢山あった。冒頭の電車での大乱闘と、その後の試写会場での大乱闘など大勢の人間が大暴れの群像劇は井筒監督ならではのヴァイオレンスであるし、随所に入る笑いのシーンなど独特のセンスを感じさせられるし、何と言っても日本の映画界で、これだけ骨太のドラマを撮れるのは井筒監督ならではである。
まだ早いかもしれないが、多分『パッチギ!』は『ゴッドファーザー』を見習って3部作になる事だろう、これから製作されるだろう『パッチギ!』第3作目を期待したい。
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1974年、アンソン(井坂俊哉)は病気の息子の治療のため、一家で京都から東京に移り住む。妹のキョンジャ(中村ゆり)は芸能プロダクションにスカウトされ、甥の治療費を稼ぐために芸能界入りを決意する。彼女は先輩俳優の野村(西島秀俊)と出会い、彼に恋心を抱く。
まずオープニングの電車内とホームでの大乱闘が井筒監督らしい。出端で観客の心を鷲掴みにし作品の中に力づくに引きずり込まれる。ただ、前置きも無く過剰なヴァイオレンスと言うのは強引かもしれない。前作では、ちゃんとキッカケがあってバス横転の大乱闘だったのだから、ちょっとしっくりこない。このシーンの喧嘩相手の日本人応援団は時代背景から考えると『花の応援団』へのオマージュ?
私は予備知識無しで見たせいか、アンソン一家が東京に引っ越してきた理由も、映画を見た後にネットの公式サイトを見て判ったし、主演の兄妹を演じる俳優が変わっていたので、前作とは別の人物の話だと思っていたのだけど、アンソンの家の仏壇に前作の楊原(現 松永)京子の写真が置いてあるのを見て初めて前作の兄妹のその後の話だと判ったしだいである、とにかく判りづらい映画だ。
時代も1974年に変わり、異常なほどにディティールにこだわっているのが画面からヒシヒシと感じる。町に張られている映画のポスターも多分井筒監督の趣味が反映されているらしく『パピヨン』『突破口』『悪魔のはらわた』『エマニュエル夫人』そして、極めつけはお正月に浅草の映画館で見るブルース・リーの『ドラゴンへの道』だ。劇場の前にはブルース・リーの腕がグルグル回る安っぽい立体看板まで作られている。映画を見た後はもちろん、なりきりブルース・リーで「アチョーッ!」と叫んでみたり、ヌンチャクまで振り回す徹底ぶりである。その他にも、ユリ・ゲラーのスプーン曲げや、「幸福ゆき」の切符のキーホルダーや、ブリタニカの百科事典、オールスター対抗水中運動会、「仮面ライダー アマゾン」や、ぶつかりそうになる『トラック野朗』みたいなデコトラや、ゲイラカイトなど、懐かしいアイテムが随所に映画に散りばめられている。
映画の感想
うーん、これは在日朝鮮人家族のサーガを描いた井筒監督版の「ゴッドファーザー」だな。井筒監督は口癖のように「僕は『ゴッドファーザー』が一番好きだ!」と言ってる監督である。前作を見ている時は、それほど感じなかったけど本作を見ると痛いほど感じ取れる。前作は日本人の目を通した在日朝鮮人との交流の話だったので取っ付きやすかったのだけど、本作は日本で暮らす在日朝鮮人の目を通した日本の話なので感情移入しづらい。
それから並行して描かれる1944年の南洋諸島の話が判りづらい。初め突然話がぶっ飛んだ時は何のことやらと思ってみていると、やがて話がアンソンとキョンジャの父の話と判って来るのだが、もう父は死んでいるのだから誰の見た回想かも不明であるのが難点である。普通、戦争の回想であるならば『プライベート・ライアン』や『父親たちの星条旗』の様に今現在生きている人の回想なら判るが、本作のように死んでしまっている人の回想シーンには無理がある、短いながら素晴らしい戦争シーンだっただけに残念に感じた。
それでもいい所も沢山あった。冒頭の電車での大乱闘と、その後の試写会場での大乱闘など大勢の人間が大暴れの群像劇は井筒監督ならではのヴァイオレンスであるし、随所に入る笑いのシーンなど独特のセンスを感じさせられるし、何と言っても日本の映画界で、これだけ骨太のドラマを撮れるのは井筒監督ならではである。
まだ早いかもしれないが、多分『パッチギ!』は『ゴッドファーザー』を見習って3部作になる事だろう、これから製作されるだろう『パッチギ!』第3作目を期待したい。
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