舞台の鉄骨のアーチは「額縁舞台」に見える。
昨年10月に続き、今年2月にもシカゴでJERSEY BOYSをリピしてきて以来、延々と続いていた(笑)「粘着記事」。ここで、一応の「区切り」といたします。
しかし、数日後には「新シリーズ」が始まるものと思われます(何それ!?)
写真はメルボルン・プロダクションの舞台ですが、なんかブロードウェーやシカゴと比べると、作りが粗く見えるのだけど、気のせいだろうか?…まぁ、いずれにしても、これがJBの固定した舞台設定であります。二重になっていることで、実際の舞台よりも、遠近感があります。まさに様々なシーンが「追憶の彼方から」現れるような感じですね。ここに、必要に応じて、テーブルや椅子、マイクやTVカメラ、楽器が登場したり、背景にプロジェクションが使われたりするわけで、いたってシンプル。日本人の場合はどうしても言葉のハンディがあるので(何度も書いているように、この台詞はかなり難しい!)せめて歌と視覚効果を楽しもうと、大仕掛け舞台を期待するとガックリくるかも~
それでですね、何度も観ていると、この鉄骨のアーチはいわゆる「プロセニウム・アーチ(額縁舞台)」に見えてくるのです。
100年ぐらいまでの演劇は、このように、舞台を額のように縁取る、いわゆる「額縁舞台」が主流だったと言われます。それが観客と舞台を遮断し、観客は「第4の壁」越しに、「切り離された世界」を鑑賞しました。しかし、観客がより想像力を働かせて、自ら劇の世界に入り込むためには、この額縁は障壁以外の何ものでもないと考えられるようになり、20世紀中盤以降の演劇からは、この「額縁」が取り外されました。今でも、「プロセニウム・アーチ」という言葉には、否定的な響きがあると言われています。…つまり、額縁舞台でのパフォーマンスなんぞには、ロクなものがないという(笑)
私は、JBでは、敢えて額縁イメージを使っているのが、一つの挑戦のようにも受け取れて、非常に興味深い。勿論、このアーチはキャット・ウォークの働きもするので、純然たる「額縁」とは言えないかも知れませんが…それでも、これを2時間半ずっと見ていると、やはり「第4の壁越し」感覚に陥ります。
しかし、その中で見せられるのは、かつての額縁舞台もののような「物語のショーケース」ではなくて、観客が想像力を働かせて物語に関わっていく世界なのです。しっかり物語として成立させながらも、観客を主体的にかかわらせるという…。プロジェクションの使用、登場人物の「多重の語り」に象徴されるような、非常に優れた演出がそれを可能にしていると言えるでしょう。このコンビネーションが、このショーを一層独特で魅力的なものにしていると思う。
私の好きなシーン…
フランキーがマリーとデートするシーン。ここは、トミーが強引にデートをセットするのですが、このときのバックには“I Can’t Give You Anything But Love”の軽快なメロディーが流れます。で、テーブルと椅子がセットされて、二人っきりになると、軽快な音楽はロマンティックなスローテンポのアレンジになり、最後のフレーズはレストランのウェイターが引きついで(最後の小節は無伴奏になる)“I can’t give you anything but ラ~~~ブ…”と締めます。憎いね~♪ここだけでも、参ってしまうのに、今度は二人のぎこちない会話が始まると、ちょっとマイナーアレンジのマンドリン演奏に変わります。マンドリンなんて…なんて懐かしくて哀切な響き…なんて切ない(!)舞台の上には、シンプルなテーブルと椅子が置いてあるだけですが、二人が初デートしたピザレストランが目に浮かんでくるようです。「スライスで注文しても、ナプキンを付けてくれない」ようなレストランなのだそうですから(マリーの台詞から)、ほんの場末の小さな店なんでしょう。
もうひとつ、クラブで、ボブが初めて3人に引き合わせられるシーン…4人目のメンバーの加入はグループに新たな可能性をもたらすでしょうが、それは同時に、それまでの事実上の「トミーの独裁体制」の崩壊を予感させるものでもありました。最初から、並々ならぬ緊張感が漂う「引き合わせ」でしたが、緊張を解そうと、ジョーイが明るい口調でボブをピアノに向かわせます。で、ボブが“Cry For Me”の演奏を始める直前、別のテーブルで話し込んでいた男女の「バカ笑い」が、一瞬ですが、店に響き渡ります。…ここも上手いな~と思う。おそらく、彼等は下世話な世間話でもして盛り上がっていたんでしょう。この一瞬の、救いのないようなバカ笑いの後に始まるボブの歌が、いっそう美しく引き立つのは言うまでもありません。
とにかく、こういう「小技」の連発が素晴らしいのがJBであります。想像力をかきたてられる楽しみというのも、舞台の魅力のひとつであることを考えれば、これは最大限に楽しませてくれるショーとも言えるでしょう。
わたくしはMAMMA MIA!を貶そうと言う気はないのですが、しかし、JBをMAMMA~と同列に語られると、かなりカチンときます(!)(結局、貶しとるやろ…爆)私はアバの音楽も好きですし、MAMMA~も何度も観ています。実際、よくできたエンターテインメントだと思います。私はポピュラー音楽も好きなので、既成の音楽を使ったジュークボックス・ミュージカルに元々否定的な考えは持っていません。しかし、JBを観てしまうと~やはり霞んでしまいます。MAMMA MIA!に、JBほどに念入りに仕込まれた演出があるとは思えません。もっとも、両者の違いは、批評家の評価の差として、しっかり表れているではありませんか。
ジュークボックス・ミュージカルと言うだけで食わず嫌いをすれば、あなたの「演劇ライフ」は相当の損をしていることになりますよ。(と、かなり強引なことを言ってみる。まぁいいか~「シリーズ最後」だし…)
というわけで、
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毎度、発つ前夜は寝ないことにしている。
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