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And This Is Not Elf Land

JERSEY BOYS : Nick


JERSEY BOYS(ジャージー・ボーイズ)第一次ナショナル・キャスト→シカゴ・キャストで、長きにわたってニック・マッシを演じているマイケル・インガーソル。(トップの写真、向って左端)

「絶賛」のタイミングを外したみたいだ…


私が最初に観たニック役はブロードウェー・オリジナル・キャストのボビー・スペンサーで、どうしても彼のイメージが強い役柄だったわけですが、シカゴでマイケル君のニックを初めて観たときは、も~う慌てふためいてしまいました…ちょ、ちょっと待ってよ…私はこのキャラクターに誤った解釈をしていたんだろうか…いや、そのようだ~

まぁ、台詞も十分に理解しきれていないところもあったのだけれども~

だいたい、ボビー・スペンサー演じるニックは、地味で何を考えているのか分からないような役柄だったけれども、ボビー自身は、基本的には背も高くてハンサムだったし、どこか誠実そうに見えた。しかし、マイケル・インガーソルは、背も低く、ずんぐりした体形で、老け顔だし(失礼)それでもって、かなりアクの強い演技をしている。このニックって、自意識過剰で、かなり「嫌なヤツ」だよ(!)(好感度急降下!!!)

大体、私にはOBCの映像にある1シーン…グループを抜けるというニックを、ジョン・ロイド・ヤング演じるフランキーが、何とも言えない切ない上目遣いで見る…がとても印象的なんですが、シカゴ・キャストでそれは期待できませんでした。フランキーはニックを見下ろしているし(苦笑)

しかし、何回も見ているうちに、マイケル・インガーソルのニック像がより実像に近いのでは?と思うようになってきました。劇中に、ボブ・ゴーディオの台詞の中で、ニックは(ちょっと危ないほど…笑)独特のこだわりを持って生きていた人物だということを表すシーンもあります。

マイケルが演じるニック像は、その独特の風貌とともに、そのパーソナリティーの中に「キザ」と「卑屈」がモザイクのように表れていて、なかなか興味深いのです。第一幕の後半は、ボブが語り手を務めて、輝かしい成功物語を見せるのですが、第2幕になって、ニックが語りを引き継ぐようになると、彼の多様な視点からの語りによって、隠しだてのない彼らの真実がそのまま晒されていきます。マイケルが演じると、不思議な説得力とともに、ひとつひとつの真実が観る者に迫って来て…おお、凄いじゃないか、このニック!!!と唸ってしまったのでした。

それと…これは、むしろ演出の勝利なんですが、
彼らの金銭問題について、組織のボスが「力を貸してやろう」と申し出たとき、ボブが「僕とフランキーの将来には、誰も立ち入ってほしくないのです!」と言う場面。(ここのボブのKYぶりはとっても好きだ。こういうKYが許されるのも天才なればこそ…一般人がこういうキャラだったなら、とっくに終わってますよ)そこで、どうも自分が「蚊帳の外」に置かれていたのでは?…と気づくシーンでは、ニックは呆気にとられた表情で「客席を見る」のですよね。客席は爆笑の渦。

…上手いよねぇ、ここ~
ここに至るまでには、ニックが二人の、いわゆるJersey Contractに気づいているらしいという伏線は幾つか張っておいて、それで、とどめは観客を巻き込むわけですよ。ここで観客は、否が応でもニックの味方になるわけで(笑)

最後に、「自分がこれまで口にしてきた幾つかの不満は、たまたま口をついて出ただけのことであり、本心は家に戻りたかったのだった」、そして名台詞(笑)「4人の仲間がいて、その中で自分がリンゴ(・スター)だったら、(夢を追わずに)家族を大事にする生き方を選んだほうがいい」と言い残して去るシーンでは、シカゴでは、一番大きな拍手が起きます。

しか~し…!

何度も観ているうちに「ん~~、これって本心なのかな?」と思えてならなくなる。
彼ならではの「美学」がそう言わせているだけなのでは?実はニックって、相当に「一筋縄ではいかない」人物ですよ。

ニックという人物の「真実」は、フランキーによって語られています。

「才能を持って生まれて、それなりに努力をしても、ヘマをやらかす人間がいる」

ニック氏にしてみれば、それを認めるのも面白くないし…ここはとりあえずリンゴ・スターを引き合いに出して、とりあえず恰好を決めておいたほうが得策ですよね(笑)当のリンゴ氏は穏やかじゃないいでしょうが…

そしてエンディングのWho Loves You?では、(ここはブロードウェーではどうだったか忘れたのですが)とにかくシカゴでは、マイケル・インガーソルasニックが独特のメロディーを歌ってかなり目立ちます。(こういうの、オブリガートって言うんでしたっけ?主旋律とは区別される高音部の装飾的な旋律)「ハーモニーの天才」としての本分を最後の最後で発揮するかのように…。そして、このマイケル君って音域も広いし歌も上手い(…と、最後に分かる…笑)

とにかく、マイケル・インガーソルのニック・マッシは、私はかなり気に入っているわけなのです。一方では、彼がブロードウェーで演じる姿はちょっと想像つかないですね…何というか、リージョナルなアクターという印象が強くて。ブロードウェーじゃないから出会えた人なのだろうか…よく分からないですけど…

で、ここまでが「前置き」なんです(汗)

これは、昨年秋に書いておくべきでした!

数カ月寝かせて、再び彼のニックを観て、改めて大絶賛するはずだったのですが…

んんんん~~~
今回は、どう見ても「ジョージ・コスタンザにしか見えない!!」これはまるでSEINFELD(となりのサインフェルド)のジョージじゃないか!もしかして、ここ数カ月で芸風変えた(まさか…)開き直ったときの声の裏返り方とか、マイケル君はジェイソン・アレクサンダーの演技を参考にしている???

とにかく、前回ほどの感動はありませんでした。
「絶賛にもタイミングがある」ようですね…

でも今回、「しょうもないこと」に気付きました。バック・コーラスのシーン(トップの写真)は、マイケル君は底の厚い靴を履いているのか、このシーンだけはフランキー役のコーリー・グラント(マイケルの隣)よりも数センチ背が高くなっていた(ホンマにしょうもないことでスイマセン)まぁ、このショーを代表するようなシーンですし、ちょっと配慮がなされたのかもしれません。ですから、実際は、この写真よりは「Vの字」になってました。

しかし、一瞬を捉えた写真ですが、フランキーのコーリー・グラントが徹底的に「演じている」のが伺えるのも面白い。ひとり、目がイッちゃってるし(笑)この人はこういう人なんですよ。だいたい、この役は、フランキー・ヴァリに似た歌い方さえできれば、演技は「学芸会に毛の生えた程度」でも誰も文句を言わないと思うんですけどね。脇は達者な役者たちが固めてるのだし…。しかし、この人の独特のテンションの高さは癖になるんです。

コーリー・グラントasフランキーについても、書こうと思えば、書くことはたくさんあるんですが、こっちこそ、しばらく寝かせといたほうが身のためだ(?)

永遠に取り出さないかもだ…(笑)
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