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And This Is Not Elf Land

JERSEY BOYS : Objective Correlative


最後にJERSEY BOYS(ジャージー・ボーイズ)を観てから3か月も経つというのに、まだ、予定していた「粘着記事」がいくつか残っているんですよ…

さて、4人目のメンバーを探していたメンバーの前に現れたのがボブ・ゴーディオでした。ジョー・ペシが手を回して、閉店直前のクラブで引き合わせられるのです。

そこでボブがピアノを弾きながら歌う曲がCry for Me。これこそ、ボブ・ゴーディオ自身がJERSEY BOYSのために書き下ろした曲です…よね(?)I Go Apeで一度「思いこみ」をやっているんで、いまひとつ自信が持てないでいますよ(汗

ここは、それぞれのボブとの出会いとその後の関係を暗示させる非常に重要な場面でもあります。ジョー・ペシに促されて、ボブはピアノを弾きながら歌い始めるわけですが…何と言うか、ここは「とってもミュージカル」な表現手法をとっている場面でもありますね。最初はストリー進行上の必然性があって歌い始めるわけですが、次第に周囲も巻き込み、最終的には登場人物たちの心の繋がりを象徴する大きなハーモニーとなる…という、まぁ分かりやすく言えばTHE SOUND OF MUSICの『ドレミの歌』のような役割ですかね(?)

だいたい、「JERSEY BOYSはフォー・シーズンズの伝記なので、ミュージカルにありがちな突然歌い出すという違和感がないから、ミュージカルが苦手でも楽しめる…」などとぬかして(もとい)「紹介して」あるのを時々見かけたりするんですが…それって、とんでもない「大ウソ」ですよ!JERSEY BOYSはしっかりミュージカルしているんですっ!だいたい、Act 2になると、しっかり「はぁ?のん気に歌ってる場合か~?!」っていう場面で歌っていますからね。ですから、私はAct 2を特に愛しています!

えっと…何の話でしたっけ!?

そうそう・・・

このCry for Meという曲は、彼女に新しい恋人ができて、
「それでもなお君は僕の気を引こうとする…もう、そんな騙しには乗らないよ…僕は君のもとを去るんだから…最初からこうなることはわかっていたんだ…だから、僕が君のために泣いたように、今度は君が僕のために泣いておくれ…」
とドラマティックに歌うラブソングです。

歌い終わったとき、店にいた数人のグルーピーの女の子たちが早速ボブに駆け寄り
「ねぇ~、この曲って、あなたの恋人のことを歌ったのぉ~?」なんて、うっとりした表情で訊くのですが、そこで、このボブの「名台詞」が飛び出すわけです。

「これは、すべての女の子。あらゆる女の子のことを歌っているんだ。TS.エリオットが言うobjective correlative(客観的相関物)というやつさ」

女の子たちは目をパチクリ…「あんた、この辺の人じゃないでしょ?」

ここは大爆笑のシーンでもあります。
だいたい、トミーなんて、クリューから「フォー・シーズンズっていい名前を付けたわね。きっとヴィヴァルディも気に入るわ」なんて言われて「はぁ!?俺たちの名前を盗んだやつがいるってか!?俺が話を付けてきてやる!」なんてブチ切れるんですからね(笑)やっぱ、さり気なくTS.エリオットを引き合いに出して語るなんて、別世界から来たボーイでしょう。

実際、ボブ・ゴーディオはニュージャージーではなくて、ブロンクスの生まれなのです。同じくワーキング・クラスの出身ではありましたが、彼の両親はそれなりに教育熱心だったそうで、実際、劇中でも「親からは、専門学校に行くようにしつこく言われ続けた」と言っています。ところが、15歳の時に自作のWho Wears Short Shortsが大ヒットして、この曲を引っさげた全米ツアーにでるようになり、結局はハイスクールを中退しています。当時のハイスクールの校長先生が「音楽の道に進んだ方がいい」と勧めてくれたのだとボブ・ゴーディオは話していました。で、ほんの先日…50年以上たって、彼はそのハイスクールから卒業証書を授与されています。

で、このobjective correlativeということですけどね(TS.エリオットはいまだに敷居が高い…汗)エリオットは「芸術という枠組みの中で感情を表す唯一の方法はobjective correlative(客観的相関物)を見出すことである。それは、特定の感情を示す方式となるような一連の事物、状況、事件の連鎖であり、感覚上の体験として終わるべき、外的条件が与えられれば、感情が即座に呼び起こされるようなものなのだ」と主張し、シェイクスピアの『ハムレット』には、この客観的相関物が欠落していると批判しました。ハムレットにはハムレットの苦悩に見合った客観的事実が欠けているのだと。

で、このCry for Meのどこに客観的相関物があるのかという話になると…なんというか、あると言えばある(笑)曲のエンディングの盛り上がりに至るまで、感情の流れを客観的に歌詞で表現したことで、女の子たちが「体験を歌ってるの?」と思ったわけ…でしょう(なんだ、この着地の悪さ…汗)

私的には、どちらかというと、ここは脚本ができた過程に興味があるのです。(こうやって、上手く逃げる)エリス&ブリックマン・チームが「客観的相関物のある歌詞を書いてほしい」とボブ・ゴーディオに頼んだわけでもないと思うんですよね(笑)…まぁ、できてきた曲からこの台詞をつけた(こじつけた?)可能性の方が高いでしょう。なんたって「ごく普通のラブソング」なわけですから…これにTS.エリオットを持ち出されてもね(苦笑)この「TS.エリオット云々~」という台詞は、ボブの、ちょっと小生意気で頭でっかちな面を、面白おかしく強調するのに一役買っているのでしょう。

ボブ役というのは、実は結構「スネ夫」が入っていますよね(笑)頭はいいんだけど、どこか独りよがりで痛い(!)今BWでやっているアンドリュー・ラネルズは(4人の中で一番たくさん笑いをとっているいるそうですし)そういう部分を上手く演じているんじゃないかと期待しているんですよ。(「期待」って何!?…

コメント一覧

master of my domain aka Elaine's
ぎゃっ!
鳩サブローさま、再びありがとうございます!!!
8分の6拍子(俗にいう3連)のロッカバラード…間違いありません。その曲ですよ!
わぉ~、そうだったのか!
この曲の「書き下ろし説」は結構自信があったんですが「いつ」「どこで」そう思い込んだのかは謎です(笑)
記事訂正しておきます~
鳩サブローさま、今後もよろしくお願いします!!(かなり当てにしていますよ
鳩サブロー
Cry For Me
こんにちは。
同じ曲かどうかわからないのですが、フランキー・ヴァリの3枚目のソロ・シングル"You're Ready Now"(1966年)のB面が、ボブ・ゴーディオ作の"Cry For Me"という曲です。
この曲はアルバムには未収録ですが、イギリスのAceから94年に出たヴァリの"Solo/Timeless"のカップリングCDにボーナス・トラックとして収められていますよ(現行のCollector's Choice Music盤には未収録)。
ヴァリの"Cry For Me"は、女性コーラスの掛け合いの付いた、8分の6拍子のロッカバラードです。
master of my domain aka Elaine's
kumikoさま、こんばんは~
いやいや、まだ具体的には何も決まってないんですが心の中では、「行きたい」から「行く!」に変わっただけなんです。
ただ、NYというのはホテルも高いだけじゃなくて、JBのチケットも高いことを忘れてましたシカゴなら100ドル出せばそこそこの席が取れたんですが…BWのJBは、このところ完売が続いてますし、シカゴと同じことをやっていたら一財産失いそう…
Kumiko
おお、
http://navy.ap.teacup.com/kumiko-meru/
いよいよ見に行かれるのですか?

ラネルズさんはよかったですよ~(って、他のキャスト見てないから比べようもないんですが。)とにかくキュートでした。「生意気」という意味も含めたcuteですが(笑)

ジャロッド・スペクターも、トミー役のドミニク・ノルフィも最高でした。
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