あらためて観ると、第2部があまりに「元祖今どきの昼メロ」で…(笑)爆笑もの…とまでは申しませんが、苦笑の連続でありました。
第1部、つまり南北戦争開戦から終戦までは文句なく名作だと思えるのですが。特に、アトランタの広場で戦死公報が配られ、息子の死を知って呆然とする母親に楽隊が「ディキシー」を演奏する場面とか今でも胸に響きますね。ひとりの少年が涙を流しながら演奏しているんですよ。「ディキシー」は南軍の兵士たちが戦場で故郷を懐かしんで歌った曲だといわれています。
O, I wish I was in the land of cotton,
Old times there are not forgotten,
Look away! Look away!
Look away! Dixie Land.
さて、これを初めて映画館で見たのは高校生のときで、直前にあの長い原作を読了していました。あのときはメラニーに惹かれました。天使のように寛容で誰からも愛される淑女メラニーこそ理想の女性だと。彼女が亡くなるところはバスタオルを持って読んだ記憶があります。すべての人々から敬愛されながらも、それでも自分の身の危険を冒してまでも母になろうとした彼女が愛しくて悲しくて…。「女性ってこういうものなのだろうか」と女子高校生なりに胸に迫るものがありましたね。映画ではミード医師がスカーレットに「安らかに逝かせてあげるんだ」と諭すシーンが泣けて仕方がなかった。
20歳で再び映画館で鑑賞したときは、とにかくスカーレットが愛しく思えてなりませんでしたね。ホントに自己中心的で高慢などうしようもない人で、野戦病院で働くのは嫌だと飛び出し、お母さんのところへ帰りたいと子どものように駄々をこねて…それでもアシュレーとの約束を果たさなければという思いから…そう、アシュレーの言うことなんてスカーレットには半分も理解できていないのに…それでも、命を掛けてメラニーと赤ん坊を守り抜く姿に泣けた。むき出しの生命力の強さに圧倒され、真人間としての美しさに泣けるようになっていた。
結婚してから観たときは…レットの気持ちがよく分かりました。一族から見放され、戦時の混乱の中で幾度も封鎖破りを敢行し、様々な手を使って富を築いた彼。似た者同士でもあり、最良の理解者となってくれるはずのスカーレットと暖かい家庭を持って安らぎたかったのでしょうね。でも、似たもの同士であったがゆえに幸福な結婚生活とはならなかった。そして、スカーレットの分身として娘のボニーを溺愛する気持ちも悲しいほどによく分かりました。
ところで、映画では、細かい伏線がかなり割愛されているんですが、レットとスカーレットの場面は比較的忠実に描かれているために、この二人の場面の割合がとても多く感じてしまいますね。原作にあったアトランタ社交界の人間模様や南部再建時代の不穏な社会の描写がかなり希釈されてしまっているのが、映画の限界とはいえ、痛いですね。そのために、後半の二人の関係が崩壊していくさまの描写がちょっと食傷気味になってしまうのかも。
さて、今回久しぶりに観るとですね…やばい、アシュレー君の気持ちがわかるようになってしまったよ…(笑)原作では、アシュレーの一族が他の南部人といかに一線を画していたかが100ページぐらい(?)割いて書かれていたように記憶しているんですが。
この世に存在しない楽園に身を置くことを夢見ていたアシュレー。その夢を分かち合えるメラニーを心から愛しながらも、スカーレットの生身の魅力も消し去ることができなかった。彼はまさに、知と情、霊と肉に引き裂かれる現世の人間の姿そのものなのですね。ま、原作でもこの辺は分かりにくいと思うんですが、ここをもっと丁寧に描いてあれば、この作品の文学的価値はもっと上がったであろうと思われますよ。
それにしても、スカーレットとメラニーはいろいろありながらも、なんだかんだ言っても最後まで友だちであり続けます。もちろん、寛容なメラニーに負うところも大きかったわけですが。
一方、アシュレーとレットは仲の悪い少年同士のように反目しあったまま。どちらも(対照的であるとは言え)南部の空気が馴染まなかったという点では共通したものを持っているし、実際、最初から南部の行く末を的確に予感できたのはこの二人であったのです。お互いに持ってないものを持っているもの同士であっても、友だちであり続けたメラニーとスカーレットに比べて、この男二人…やっぱ、男って「子ども」なんだよ!と改めて思ってしまって…スイマセン
ま、今回の『風と共に去りぬ』鑑賞は私にとってのひとつの「区切り」でしたね。
今後は、昔ほどに感動して観ることはないんじゃないかな?(それぞれのキャラクターに「ひととおり」共感できたわけですし)
ビビアン・リーは『欲望という名の電車』の鬼気迫る演技のほうがすごいと思いますし。
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