映画『ショウ・ボート』ここで取り上げるのは、3度目の映画化に当たる1951年の作品です。
SHOW BORTは、もともとは舞台作品であり、1920年代に上演されました。それまでの、レビューやコメディーが中心だったミュージカルのなかで、初の「ドラマ」としての形をとったミュージカル作品がこれです。オスカー・ハマースタイン2世&ジェローム・カーンの作品。
で、この映画ですが、冒頭のシーンなどは、色がとてもきれいで、さすがアカデミー賞撮影賞にノミネートされているだけのことはあります。…しかし、素晴らしいのは冒頭の15分ほどだけですね(おいおい)
いや、残念なのは、主役のマグノリアとゲイロードが「地味」すぎること…で、波乱の生涯を送る女優、ジュリア役のエヴァ・ガードナーに完全に食われてしまっている感じ。エヴァ・ガードナーの存在感は素晴らしいです。歌も吹き替えなしで歌っているらしいんですが…なんというか、歌は特に上手いわけではありません。MAMMA MIA!のメリルのレベル。なので、中盤、ジュリアは酒におぼれた放蕩な生活をしているのだけれども、その分、凄まじいまでに魂を揺さぶる歌を歌う(Bill)…っていう部分が伝わってきませんですね。(でも、この時代は、これでもよかったのかもしれませんが)
あと、ショウ・ボートのダンサーコンビ、エミリーとフランクのダンスは、これは映画でもたっぷり魅せてくれていますが、このふたりもまた、主役の地味コンビを食ってしまっていて…とにかく、全体的にバランスを欠いている感じは否めません。
ただ、この映画は、オリジナルの舞台作品に、かなり手が加えられているようで、ゲイロードに殺人(正当防衛ではありますが)の前科があることには触れられていませんし、ジュリアの恋人が、腕を切って血を流すシーンもありません。映画では、ジュリアは最後まで登場して、主役の二人を見守る設定になっていますが、それも、舞台ではない筋書きのようですね。
時代設定は1890年代で、南北戦争が北軍の勝利によって終わり、黒人奴隷たちは解放されますが、ショウ・ボートで下働きをするジョーが歌う、あの有名なOl’ Man Riverにも歌われるように、その暮らしは、まだまだ過酷なものだったんでしょう。
ショウ・ボートが進むミシシッピの流れは人生そのもので、その中には、愛や憎しみや出会いや別れがあって…しかし、船にも、華やかなライトが当たる部分と、厳しい下働きの世界があって、そのコントラストの妙が観る者に訴えかける作品なんだと思います。この作品の中における、人種差別の描写については、今なお、問題にされることが多いようですが、代表曲Ol' Man Riverのように、黒人の登場人物に「真実」を語らせるというのは、さまざまな小説の中でも見られるやり方ですよね。
また、制限された空間である舞台を「船」のイメージで見るというのも、非常に面白い劇場体験であろうと思います。
というわけで、このSHOW BOATはコネチカットのGoodspeed Musicalsで好評上演中です。これも、多少アレンジされているようです。なにせ古い話ですので…現代の観客に受け入れられやすいようになっているみたいです。
私も行きたくて仕方がないんですけれども(9月17日までです)
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