ユージン・オニール『氷人来る』
来年の春、シカゴのGoodman TheatreでオニールのTHE ICEMAN COMETH-『氷人来る』が上演されます。主演はネイサン・レインとブライアン・デネヒー。どっちも、本物見てます(ま、一応、言っておきますわ…?)
シカゴのGoodmanも名門地方劇場の一つで、私は2年前に、ここでオニール作品を二つ観てます。『楡の木陰の欲望』と『毛猿』
『楡の~』は、シカゴでのランの後、ブロードウェイにトランスファーしました。とにかく、Goodmanでは、ここ数年、外国の(英語圏以外の国も含んでいたと思う)シアターとともに、ユージン・オニール再発見プロジェクトをやっているようです。で、いよいよ、晩年の大作『氷人来る』登場となるわけですね!それも、ネイサン・レインとブライアン・デネヒーでっせ!そら、某Mさまならずとも「おっ!」…ですよ。
(ちなみに、THE ICEMAN COMETHは、『氷人来る』ではなくて『氷屋来たる』とか、まぁいろいろ訳されてますが、ここでは『氷人来る』にします。何となく、こっちが気に入ってるもんですから…)
それでですね~…
ちょっと、言ってもよろしいですか~~~
あのぅ、『氷人来る』って、やっぱ名作なんでしょうか??
スイマセン、私はよくわからないのです!!
『楡の木陰の欲望』『喪服の似合うエレクトラ』『夜への長い旅路』この3作は文句なく「傑作」「代表作」でしょう!ちょっと個性的な作品ではありますが『毛猿』『皇帝ジョーンズ』、これも素晴らしい作品だと思います!
しかし
『氷人~』ですよ…本は読んでいるんですが
これは、私が手にしたことのある、アメリカ演劇史・文学史関連の文献に限って言えば…この『氷人来る』が、ユージン・オニールの代表作の一つとして挙げられているものと、挙げられていないものがあります。(つまり…早い話が「扱いは微妙」)これは、晩年、アルコール依存などに苦しんでいた頃に書かれたもので、内容の暗さと、作品の長さで、なかなか上演されなかったようです。
この話は、ニューヨークの安宿で、一日中飲んだくれている男たちを描いています。まぁ、どいつもこいつも、人生をほぼ投げ出しておりまして、一日中パイプドリームに耽っているわけです。で、そこの宿の主人の誕生日に、ヒッキーという、一応成功していて羽振りのいいセールスマンがやってきて、彼が唯一、現実世界との橋渡しをしてくれるような感じなんですよね…年に一回だけね。
ところが、ある年、ヒッキーはいつもとは様子が違うのです。例年の快活で羽振りのいい様子はなく、むしろ安宿の男たちに「いつまでも、パイプドリームに耽っているんじゃない!」「現実を見るんだ!」的なことを言って諭すわけです。…で、そこから、ちょっとした動きが出るわけですが…
ま、ここまでの話では、普通にアメリカ的な話だな~とも思えるわけです…人間というのは、軽い麻酔がかかったような状態でいるほうが心地よいことがあるわけで、せっかく、気持ちよく夢見ているのを覚ます人が現れたら…そら、ちょっとハタ迷惑でしょう。
しかし…ワタクシ、分からないのは、このヒッキー(ネイサン・レインが演じます)なんですよね…この人、言っていること滅茶苦茶じゃね?
「夢ばかり見るな!」「現実を見ろ」…それは分かります!
しかし、このヒッキーが言うには…自分自身は、セールスであちこち飛び回りながら、適当に女遊びをしているわけです。でも、妻は、ヒッキーを信じ続けます。ま、それが「重荷になった」というのは「よくある話」でしょうが、このヒッキーは「夫を信じるという『夢』から、妻を解放してやりたくて」妻を手にかけてしまうわけ。
なんでそうなるんでしょ?私は、どう考えてもワカリマセン(!)そういうヒッキーの衝撃の告白を聞いたところで…私だったら「この人、言ってること破綻してない?」と思うだけでしょうね…なんで、この告白を聞いて、男たちが目覚めて、自分のスタイルを変えようとするのか??
ただ、ちょっと「謎」は残るんです。本当に、ヒッキーが妻を手にかけたのか?そうではなくて、「妻が自分で命を絶った」可能性もゼロではないわけで(と思う)そうだとしたら、また別の様相を帯びてきますよね。
ま、これは舞台で観たことはないので、どういう風に演じられるのか…興味はあります。
ちなみに、ブライアン・デネヒーが演じるのは、安宿にいるラリーという元活動家の老人。彼の息子も重要な役なのですが、若手の実力派俳優がキャスティングされることでしょう。これもブロードウェイへトランスファーしそうな気がします。
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