「社会福祉士」の独り言Ⅱ-日々の雑感

福祉に関わる事柄の他、日々感じたことを書き綴っていきます。

最上敏樹著 『未来の余白から』 婦人之友社 2018.12

2019-12-19 14:59:23 | 読書
著者自身が「多読家かつ速読家」と書かれている通り、多くの作品が取り上げられている。それらは、10代に読んだスタインベックから、現代につながるアメリカ、ヨーロッパ、ベトナム、日本。さらには、音楽、映画もありということで、リストアップが難しいほどだ。特に、映画は、ヨーロッパの作品がほとんどで、映画の評論に目を向けていないと、実際に見る機会がないものばかりだった。自分にとって、重なるのは、怒りの蒲萄、サン・デグジュペリ、灯台守、井上ひさし、夢千代日記(1981年)くらい。文面全体を通じて、静寂、沈黙、という言葉が伝わってくるが「平和と人権を否定する非寛容さ、自国・自民族主義、弱者への無神経さ、騒々しい社会、静寂を保つことから生まれる快い緊張感が失われた。沈黙と静寂を取り戻し、社会と文化のあるべき姿に思いを向ける」(P207) …この文章に集約されていると思う。
 読み終えて、新たに学ばされたのは、沖縄の「非武の文化」のこと。これは、大田昌秀元沖縄県知事が紹介した(P40)とあるが、改めて、大田氏の講演※を確かめてみると、氏が、アメリカで発掘した軍事裁判の記録。これは、石垣島に不時着し捕虜となった米兵3名の処刑(断首)に関わるもので、直接関与しなかった現地招集の7名(未成年3名)が死刑宣告をされた事件。その減刑のために、郷土史家の仲原善忠氏が裁判官に嘆願書を送った。そこに述べられた尚真王による武器携帯禁止のことの他に、仲原氏は、沖縄の万葉集と称される「おもろそうし」、「遺老説伝」の著名な研究者であったが、その千首以上の歌を資料にし、そこには殺すという言葉がない、こうした意識はないというのが「非武の文化」だった。それに裁判官らが動かされ死刑を免れたというもの。沖縄の古くからの平和思想が、抽象的な概念ではなく、7名の命を救うほど大きなインパクトがあったのだ。
また、氏が、ぜひ読んでみて欲しいとあった「そこにいるのかい」(P153)で紹介されているアンソニー・ドーア著『全ての見えない光』(2016年刊)。氏は、最初に邦訳を読み、さらに、原本の米語、作品の舞台となる仏語、独語版で読み込むほど引き込まれたということだった。現代アメリカの小説は、ほとんど読まないしドーアも全く知らなかっただが、紹介文に自分も魅かれて結局、読むことになったのだけれども、勧められた通りの内容だった。※大田昌秀・佐藤優著『沖縄の未来』 芙蓉書房出版2010.1

最新の画像もっと見る