評価5
再読(前回2019年12月27日)。
監禁が長期化し、貴子の精神が錯乱して警察組織に対する不信感が募り無力感が漂い始める。そんな中、犯人たちの居所を掴んだ滝沢たちは徐々にその包囲を狭め、強行突入の機を窺う。突入の合図は貴子からの一言と決まった。その言葉は、貴子をこの窮地に追いやった同僚刑事の名前だった。「星野!」
強行突入を待つ貴子のジリジリとした気持ちがひしひしと伝わる。同僚刑事や組織を恨み、自分の人生を後悔し、疑心暗鬼の塊となり、電話で声を聴いた元同僚の滝沢さえも罵ってしまう。場面の設定はほぼ密室に固定された物語の中、ここまで読者を引き付ける著者の巧みな心理描写には驚くしかない。
犯人グループに加わった中田加恵子の悪に蹂躙された半生に少しの安らぎが訪れることを願うエピローグに感動。乃南アサ、上手すぎる!
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