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聖の青春ー大崎善生

2023年03月16日 | 読書


評価5

再読(前回2017年2月28日)。
1998年8月8日午後0時11分、将棋界の怪童A級棋士・村山聖9段(29歳)は癌のため広島市民病院で息を引き取った。あの羽生善治、谷川浩司、佐藤康光などと互角以上の戦いをして生涯成績は356勝201敗勝率.639だった。その村山の生き様を追ったノンフィクション。第13回新潮文芸賞受賞作品。

幼い頃に腎臓病(ネフローゼ症候群)に罹患し、入退院を繰り返した村山はベッドの上で将棋を覚え、持ち前の集中力でメキメキと頭角を現して、1982年13歳の中学生で奨励会合格。そして、谷川浩司、羽生善治を凌ぐ2年11ヶ月のスピードで奨励会を勝ち上がり、1986年17歳の若さでプロデビュー(4段)する。その後も、持病と戦い入退院を何度も繰り返しながらも昇給を続け目標の「名人」挑戦を目前にしながら、腎機能停止、膀胱摘出、肝臓への癌移転と進み帰らぬ人となった。

私はこの本で「棋士・村山聖」の存在を初めて知った。
涙ながらに読み終えて、動く村山聖を見たいと思って平成10年2月28日の羽生善治とのNHK杯決勝の動画を見た。村山が亡くなる半年前だ。その時、村山は癌の再発を医師から告げられている。そんな中での対局。グレーのスーツに紺のネクタイ姿の村山は頭で描いていたほどむさくるしくもなく、病魔の進行もうかがわせない落ち着いた堂々とした佇まい。その風格に驚く。結果は敗戦寸前まで追い詰められていた当時4冠の羽生が村山の信じられない一手で息を吹き替えし勝利。その後、村山は最後の命の炎を燃やすように5連勝を飾るのだった。その後も8月に亡くなるまで4月3局、6月2局戦っている。

病気と闘い続け、相手棋士と戦い続けた29年。神様はなんという試練を村山少年に与えたんだろうと思う。あまりにもむごい。でも生きる勇気をもらった。本当にこの本を読んで良かった。しばらく将棋番組を見ることはなかったが、今度から見てみようと思う。村山聖の同世代、谷川浩司と羽生善治の活躍と後輩たちの活躍を。そう言えば村山はITには縁遠い人間だったという。昨今の将棋界の騒動を村山はどう思っているのだろう・・・

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