新アリーナ問題「契約解除に議決求める条例」で豊橋市議会/今後の対応で市長「慎重に検討」/公布期限は来月18日
2025/01/30
豊橋市議会は29日、臨時会を開き、長坂尚登市長が「議会の権限を越え、法令に違反する」として再議に付した「市議会の議決すべき事件を定める条例」の一部改正を賛成多数で再可決した。多目的屋内施設(新アリーナ)計画に端を発した市長と議会の対立は混迷の度を深めている。
採決では、昨年12月定例議会の最終日に条例改正を緊急提案した自民党や公明党、民主系「まちフォーラム」などが再び賛成し、地方自治法が要件とする過半数を超えたため再び可決された。
前回採決を棄権した尾崎雅輝議員(自民)は、反対に回った。東日新聞などの取材に「質疑を通して、市側の根拠は妥当と判断した」と説明した。
本会議で賛成の意見表明を行った山本賢太郎議員(自民)は「答弁からも明確に違法との判断には至らず、法解釈の見解の相違と理解した」と述べた。
反対の立場から意見を述べた斎藤啓議員(共産)は、突然の動議から数時間の審議で採決した昨年末の本会議での制定過程を問題視。「市長と議会の権限にまつわる、法にも関わる事柄を軽々しく扱った」と提案議員を厳しく批判した。
閉会後、記者団の取材に応じた長坂市長は「議決は重いものなので、しっかりと受け止めたい」と述べた。今後の対応について「慎重に検討したい」と答えるにとどめた。
市によると、条例の公布期限は2月18日。議決に不服がある場合、長坂市長は大村秀章愛知県知事に対して同19日を期限に審査を求めることができる。知事の裁定にも不服であれば、裁判に訴える方法もある。
条例の一部改正をめぐっては、議会の議決を経て結ばれた契約を解除する場合にも議決を必要とする内容に法的な問題があるとして、市側は公布を見合わせ精査を実施。公布期限前日の今月14日、長坂市長は「議会の権限を超えた事項について定めた議案の議決で、法令に違反する」などとして、議会に審議のやり直しを求める「再議」を申し立てた。
市長と議会の衝突の背景として、豊橋公園での新アリーナ計画が横たわっている。自公などが推進してきた同計画の中止を訴え、昨年11月の市長選で初当選した長坂氏は、事業者の特別目的会社「豊橋ネクストパーク」に対し、建設費などとして議会の議決を経て約230億円で結ばれた特定事業契約の解除に向けた協議を申し入れ、工事は中断している。
再議の申し立ての中で、長坂市長は「特定事業契約の解除を阻止することを目的に提案されているといえる」とも指摘した。