背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

ヘア・アレンジ

2024年09月18日 01時23分24秒 | CJ二次創作
  今日は、アルフィンが髪を後ろで一つに結い上げていた。
  馬の尻尾。ポニーテイル。
「……珍しいな、髪」
 言葉を選んで、ジョウが言った。
「え? ああこれ。うん、たまにね、気分」
  ーーというのは違って。今日は珍しく寝癖がついていたのだ。くっきりと。
 ブローする暇がなかっただけ。気分転換もかねてヘアアレンジしたのだった。
 ジョウが何となく落ち着かない。何をやってもそわそわしているような。心ここにあらずといった風な。
 ……?
「どうかした。髪型違うの、そんなに気になる?」
 ちらちらと視線を感じて、たまらずアルフィンが訊いた。似合ってないのだろうか。っていうか位置がおかしい? そう言われてジョウはう、ッと詰まった。
 とっさに誤魔化そうとして諦め、天を見上げて告白した。
「~~気に障ったらスマン。そのう、うなじが、きれいで……。どうしても目が離せなくて、つい見てしまって」
 口を手で覆ってしきりと謝る。耳たぶが真っ赤だった。
「う、うなじ?」
 アルフィンは思わずそこに手をやった。おくれ毛が数本、指先にからむのが分かる。
 いつもは隠れているところ。髪の毛で。それをわざと見せつけたつもりはなかった。今日はたまたまイレギュラーだった。
 なのにジョウのこの反応。予想外だ。
 どうしよう。すっかり照れて恐縮してしまっている。アルフィンはめまぐるしく考えた。気まずいのを何とかしなくちゃ。
「きれいって、褒められるの嬉しい。たまにはヘアアレンジもいいね」
 うふふと笑って尻尾を触った。
「ジョウもどう? アレンジしてみない?たまには」
 思い立って話を向けてみた。ジョウが「俺?」と目を見開く。
「そう、ちょっと来て、こっち」
 彼の手を引いてアルフィンはソファにうながした。そして諸々の準備を整え、彼の隣に座った。ヘアワックスを取り出し、前髪とサイドにそれをつけて手櫛で流したり、毛先を遊ばせたりした。ジョウは居心地悪そうに、浅くソファに腰を下ろすのみ。
「あら……」
 手を止めて、アルフィンの表情が変わる。距離を取ってまじまじと彼を見つめた。
 普段髪に手を掛けておらず自然なままでいるジョウが、ちょっと手を加えるとものすごくおしゃれな感じになる。凛々しい眉と黒々とした瞳が露わになって、三割増し、ハンサムになった。
 まあ……。なんてかっこいい。ヘアアレンジってこんなに印象を変えるの?まるで魔法ね。
「何だよ。声も出ないくらい、変か」
 ジョウの眉が曇る。ふっと。鏡を見せていないので、どれぐらいハンサム度が増したのか自分ではわからないのだろう。
 いや、見せたとしても、自覚するかどうか。そういうところ、無頓着だからほんとに。
 まさか。と言いかけてアルフィンは飲み込んだ。
 ちょいちょい、と指先で彼の髪を直してあげながら、言った。ぐっと距離を詰めて顔がくっつくぐらいの近さで。
「変じゃない。とても素敵。でも、あたしの前以外でそーいう髪型しちゃだめ。他の女に見せちゃだめよ、ゼッタイ。いーい?」
 念を押す。
 ジョウは怪訝な顔をした。
「い、いいけど。なんでだ」
「鈍い。察してよこれぐらい」
 あたしがよそで、他の男の人の前でポニーテールになったらどうなの、と言ってやると、ああと理解が追いついたようだった。
「了解」
「わかればいいのよ」
 機嫌よくアルフィンが頷く。

 そんなわけで、二人のヘアアレンジは<ミネルバ>の中だけというきまりごとになった。

END

うなじがきれい、と言わせた後に、キスでも迫ればいいものを。…
ジョウの髪を弄ってあげるあたりが男慣れしていない姫なのです。




コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 空が泣く(オリジナル短編) | トップ | 今日いち-2024年9月18日 »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (toriatama)
2024-09-19 18:49:00
手練手管をまだ知らない純情可憐な姫を堪らなく可愛ゆく思う私です…。そんな姫もそのうち言い寄る男をさらっとあしらう妖艶な大人の女になるんでしょうかねえ。それともJ君に守られてずっと純なままでいられるのかな。
新作ありがとうございます。オリジナルも楽しく拝読しました。安達さんの描くちょっぴり切ない恋物語はとても素敵だと思ってます。姫とJ君には基本ハッピーにイチャイチャしててもらいたいですけど(この2人のちょっぴり切ない話を想像できない…。そしてR40は切なすぎて泣いた。)
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

CJ二次創作」カテゴリの最新記事